経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか
景気、国際経済、政治の状況など、いずれも短期的な情報については、
さまざまなメディアから情報を日々入手することができますが、
もっと大きな視点で、おおきな歴史の動きの中でわれわれはどういう
位置にあるかという情報についてはなかなか触れる機会がありません。
メディアも企業ですから、”売れる”記事しか書かないし、報道しない
からです。
(記者の方に聞くと、”売れる”というのは、読者に共感を得られる記事
だそうです。あまりに景気のいい企業の記事はやっかみで読まれないし、
一方であまりに景気の悪い話もうれない、したがって、事実よりも平均水準
にもっとも近い視点で共感される記事が優先されるとのこと)
この本は経済の歴史上起こったことの分析結果を元に、日本がおかれて
いる状況と、これからなすべきことの方向性を与えてくれます。
著者のような学者は、一般人にはなかなか分析できないこうしたマクロな
視点で付加価値をつけるのだなあということを示すいい例だと思います。
タイトルにあるグーグルやIT戦略について詳しく触れている部分は少ない
ですが、専門の金融分野については非常に明確な主張があり、とても
参考になります。
”このままでは日本のものづくりが負けてしまう、
だから負けないようにもっとものづくりを”
というような近視眼的で、戦略性のないかけ声だけの主張に対する反論や、
リーマンショックでさらに強まった金融アレルギーに対する反論を、
国際分業や国家の発展プロセスという視点から解説しています。
日本の立ち位置を大きな視点で捉えるうえでとてもいい本だと思います。
Ost: Wall Street
The album features nine DAVID BYRNE tracks, including several songs from his 2008 collaboaration with Brian Eno, 'Everything That Happens Will Happen Today'. Released on Byrne's own Todo Mundo label.
デビッドバーンの新曲がきけるなんて!
すっかり分かりやすくなった音楽に さみしさと うれしさを感じる。
まあ、監督ともども現役で頑張ってるのが素晴らしいね。
リーマン・ショック・コンフィデンシャル(下) 倒れゆくウォール街の巨人
リーマン・ショックの金融危機を丹念に実名で書き出した本であるから、面白くないはずがない。訴訟社会で実名を使って記述しているからには信憑度は高いはずで、よくここまで調べ上げたものであると感心してしまう。本書は、アングロサクソン社会の優れたジャーナリストが得意とする大作レポートで、貴重な存在意義がある。しかしながら、皮相的な現象をいくら克明に記述しても、本質は必ずしも浮かび上がってこない。この意味で本書は極めてジャーナリスティックで、沢山の人物を登場させ、右往左往させる様は将にここ三十年の金融ビジネスを彷彿とさせる。
本書の特色は、沢山の登場人物が沢山の発言をするものの、今回の金融危機の原因や解決策に関してほとんど本質的な言及がされていないことにある。金融危機の原因としては、日常的な金融常識では理解出来なくなった金融実務に対して、「何処何処の誰々を知っているし、電話一本で話すことが出来る」といった陳腐化した能力しかなく、人間関係だけで世渡りしてきたような、近代金融ビジネスを経営すべきでないトップ経営者、当局の官僚、政治家達の跋扈を許してしまったことが大変に大きな原因として指摘できる。中央銀行総裁として、ただひとりJ.ハルのデリバティブ教科書を理解する能力があったと言われるグリーンスパンでさえ、現在は戦犯の一人になったわけで、日本の金融界だけではなく、米国のトップ経営者達がどの位お粗末であったを本書でトレースすることが出来る。BOAやWファーゴ銀行のように商業銀行であることを素直に認め、理解できない無理な取引にのめり込まなかった金融機関が生き残れたことは偶然ではない。この意味から、レーマンやAIGに限らず、Gサックス、Mスタンレー、メリルリンチ等々、この金融危機の原因を作った強欲な経営者達の世界経済に対する犯罪行為は大変に大きなものがある。
本書は、講談調の金融危機略史に過ぎず、その本質を考えるには、Mルイス「世紀の空売り」やSパターソン「ザ・クウォンツ」なども併せ読むべきである。
日本と世界を直撃するマネー大動乱
さきほど、アマゾンから郵送されてきました。
まだ、目次を読んでいるだけですが、世界経済の「現在進行形」を浮き彫りにしてくれている本だと思われます。
目次などを少し紹介しておくと、購入の判断材料になるかもしれませんので、書き込んでおきましょう。
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第1章 全米市民もようやく目覚めたのか
アメリカは財務省・ウオール街複合体に潰される?
第2章 アメリカの金権社会は、荒療治でしか直せない
第3章 悪夢と化したアメリカン・ドリームとこれから隆盛するジャパニーズ・ドリーム
第4章 ほんとうに危ないのはドイツとイギリス
復活は永遠にありえないユーロ経済の真実
第5章 明らかに変調する中国
崩壊へのカウントダウンはすでに始まっている!
第6章 なぜかマスメヂィアは絶対報道しない日本と金だけが一人勝ちする世界
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内容のコメントは、またの機会にでも。
ツイッキー(追記)1
「アメリカという不思議の国」という表現で、アメリカを客観視しようとする姿勢が著者に見られます。
親米・嫌米という極端なポジションに陥らないところに好感が持てます。
たしかにアメリカは、ちょっと変わっている「変人」ならぬ「変な国」という視点を持っていないと、まだまだ経済的にも軍事的にも強国に世界は振り回され続けます。
ツイッキー2
本の受領後24時間以内に読了しました。
別に、全然偉くはないのですが、書いてみました(笑)
ところで、増田さんの著作の中には、色々な本の引用があるので、興味を持てた引用本は、アマゾンで取り寄せて読んでいます。
最近は、ジェームズ・デビッドソン&ウリアム・リース・モッグの共著である『世界経済が破綻する時』『大いなる代償』を読んでいました。
これらの本も中々示唆に富む良書だと、思いました。
ツイッキー3
増田さんの本は、ご自身の経歴というか自伝的感想というか、心情表現みたいなものもタマに書かれていて親近感を持てます。
以前の本では、「特にこれといったあてもなく広い範囲の読書」研究をされていた時代があったそうです。
そんなとき「こんな読書していて、いったい何になるんだろうな」と思いながら読書を続けておられたとか・・・・・・
しかし、その「特にアテのない広範な読書」がベースになって、今の著作活動に生かされていると思われます。
やや過激とも言えそうなご発言でも、その当時の読書等で培われた「教養」が、深みと味わいを醸し出してくれていると思われます。
今回の本では、著作の基礎となるデータを提供してくれているブログサイトへの感謝を捧げながら、それらのお陰で「経済時論書の著者の寿命を10年か20年延ばしてくれたような気がする」と、さりげなく書かれています。
今後のご活躍を、陰ながらお祈り申し上げます。
ツイッキー4
最近、増田さんは雑誌『SAPIO』にも寄稿されていたんですね。
若手の三橋貴明さんも寄稿されていて、なんか面白そうな雑誌になりつつあります。
と同時に、SAPIOには大前研一さんとか落合信彦さんも並んでいて、豪華と言うかなんというか、彼らは欧米特に「アメリカよアメリカよ」派の人たちで「日本ってダメよね、おバカさんよね♪」派の人たちではなかったですかね?
大前さんは、最近やっと「さらばアメリカよ」で、「いち抜けた〜」して今度は「やっぱり君だよ、ユー・ユー・ユーロ」派に転身したばかりなのに、今度はソブリン危機で・・・・・「ソ(ブリ)ンな馬鹿な」「ユーロよ、お前もか」という心境かも知れません・・・・・・「オー・マエ・ゴッド!」・・・・お察し申し上げます。
ウォールストリート・ジャーナル式 経済指標 読み方のルール
米国のマクロ動向は自分の業務に影響があるので新聞記事を中心に状況把握と分析を行っています。
そんな中で本書を手に取ってみました。
これまでも米国の景気指標をまとめた本はあったのですが、
本書は≪非常に読みやすい≫というのが第一印象です。
その要因を考えてみたところ、次の3つでした;
・まず、解説がポイントをつきながらも簡潔であること。
・次に、目次や見出しが見やすく、分類もわかりやすいので、検索がしやすいこと。
(すぐに目当ての指標の解説ページにたどり着けます)
・そして、読みやすい翻訳であること。(とてもこなれた翻訳だと思います)
米国の景気指標が中心ですが、商品関連指標(銅価格、石油在庫等)、バルチック海運指数、さらには日銀短観なども取り上げ、全部で50の指数が解説されています。
先般、米国の≪消費者信頼感指数≫の記事が新聞に出ていたので、さっそく本書の解説頁を参照しました。
どういう指標なのかといった定義説明のみならず、「…非常に上下しやすいので、早とちりをしないように慎重に判断する必要があります。(中略)細かい動きにとらわれず、3カ月分の平均的な動きがどうなっているかに注目してください。」(P39より引用)といった留意点なども解説されます。
こういう記述があると誤った指標の解釈を防げそうです。
私のように、新聞から米国の経済動向を状況把握されている方々、特に指標を参照されている方々には、とても役立つと思います。
読みやすさ便利さから星5つとしてました。
おすすめです。