ホルスト:惑星
若いメータとロスフィルが来日した時聴いたのがホルストの「惑星」でした。大昔の話ですが私にとっては強い印象が今も残っています。最近になってカラヤンやボールトなど様々な「惑星」を聴いてみて、その各々に良さを感じるのですが、この小澤さんの「惑星」は少々驚きました。若いはずの小澤さんが、81年録音のカラヤン・ベルリンフィルの「惑星」に近い解釈をしているように感じたのです。特に火星と木星です。ボストンとベルリンでは響きは違っていて当然です。しかし小澤さんが聴かそうとしている音楽はカラヤンに通じているようです。決して真似ているとは言いません。ウィーンフィルのカラヤンとは違っていますから。私はファンではありませんが、この一枚で小澤さんの演奏を再認識しました。まだ聴かれてない方は聴いてみる価値のある一枚だと思います。廉価版でもありますから。
科学キャラクター図鑑 天文学―きらめく世界
私は、今まで天文学はおろか、宇宙とか星とかにロマンティックな気持ちを持つ事さえなかったような人間でした。
しかし、子供につきあって少し知ると、もっと知りたくなりました。
遅まきながら只今少々勉強中です。
そんな時、この本を図書館の新刊コーナーで見つけました。
うん!おもしろい!買わなきゃ!
星だけではなくて、国際宇宙ステーション、火星探査車、宇宙ごみ、ビッグバンに至るまで、人格ならぬ星格?をもらい、一人称でおしゃべりします。読んでいると、はるかな宇宙の様子が3次元でイメージされてくるのです。
例えば、「木星の衛星」では、「太陽系のミニチュアみたいに、木星の周りを63個もの衛星がまわる」と説明があり、
「私たち4人はガリレオ衛星といわれる大柄な兄弟だ。イオは、いつもおなかがピーピーで機嫌が悪い。・・・」と続きます。
天文学の本でありながら、文章から宇宙の様子をイメージできれば、相当の国語力がつくといえるでしょう。
原書は読んでいませんが、(たぶん私には理解できないでしょうが)訳は自然で、かなり上手いと思います。
ホルスト:組曲「惑星」
演奏は素晴らしいんですが、この時期のバーンスタインらしい元気の良さというか、根アカさが出ているので、最初に聴いて、惑星ってこんなものだと思ってしまうのはもったいない気がします。個人的には、惑星の良さがいまいち感じられにくいように思います。(あくまでも個人的なものですが・・。)
いろいろ聴いていくうちに、出会った方がいいような演奏だと思うんですよね。(最初に聴く演奏が、その曲の印象を作ってしまうので・・)
変愛小説集
現代英米文学作家の中で飛び切りの奇想を得意とする10人が書いた恋愛に関する奇妙奇天烈な11作品をセレクトした風変わりなアンソロジーです。編訳者の岸本佐知子氏が意図された通り、本書の収録作品にはまともな普通のお行儀の良い物語はひとつもありません。どんなに愛する対象が奇妙でも、不思議な出来事が降り掛かって来ても、思い込みが激しく盲目的に愛してしまうパターンが多く、他に愛と憎しみは背中合わせである事を実感させる物語、不幸に取りつかれて離れられない悲哀の物語などがあります。私が印象に残った5つの物語を紹介します。
『五月』アリ・スミス:突然に木に恋してしまう性別不詳の人物の物語です。主人公は世間から理解されず疎外されますが、無害であればそっとしてあげたい気持ちになります。『まる呑み』ジュリア・スラヴィン:人妻が若い男を体内に呑み込んでしまうお話で、体内でのセックスなどグロテスクかつ想像不能の領域で勿論真面目ではないですが、発想の奇抜さに感心しました。『リアル・ドール』A・M・ホームズ:バービー人形に恋した少年の話で、流血シーンは一切ないですが次第に生理的な恐怖感がじわじわと込み上げて来ます。『ブルー・ヨーデル』スコット・スナイダー:不意に失踪した恋人の行方を追って飛行船を追いかけ続ける男の話です。ひたすら愛の為にどんなに小さな可能性でも諦めない姿は貴いと思います。『母たちの島』ジュディ・バド二ッツ:戦争で男たちが出て行って女だけが残された島に、異国の兵隊が来て女たちに子種を宿させて去って行きます。子供が大きくなったある日、悲劇が再び繰り返されます。決して感情を表に出さない女たちの闇の心模様が、さり気なく描かれていて却って深く心に伝わります。
愛は喜び悲しみの何れにしても心に深く浸透して強烈な感情を呼び起こします。ハッピーエンドで終わらない複雑な思いの詰まった「変愛小説集」を讃えたいです。