ROMANTIQUE
厳しかった大学生生活の中で、一時の潤いを与えてくれました。本当に人生の糧となったアルバムです。
世紀の変わり目を超えて、まったく色あせないことに驚きます。EUとして生まれ変わる前のヨーロッパは古く取残された世界で、ある種の諦めと懐古の意識が支配している印象でした。ほとんどが短調で構成されたこのアルバムは、いわゆるヨーロッパ三部作の中でももっともその雰囲気を強く醸し出しています。いつになっても古びないのは、発表当時から既にヨーロッパの古さを表現していたからかもしれません。
いわゆる疑似ヨーロッパ音楽をヨーロッパ人はどう思うのかと思い、以前クロアチア人にCDをプレゼントしたところ(歌詞は理解できないにも関わらず)絶賛していました。日本らしい音楽に聞こえたか、それともヨーロッパの音楽に聞こえたのかは、彼女に聞きそびれました。
曲・詩とも秀逸ですが、坂本龍一の編曲がすばらしく、特に「若き日の望楼」「雨の夜明け」は、アバンチュールの「愛の行方」とともに、彼の全作品の中でも最高傑作ではないでしょうか。坂本龍一の本当の才能は、編曲にこそ現れているような気がします。
海中遊泳~Into the Sea~ V-music06 [DVD]
来客が多いので、海やビーチのBGVを探していました。
画像はとても美しくて、海の中をイルカ、クジラ、ジンベイザメ、マンタ、ウミガメなどと一緒に泳いでいるような感じです。
「7番目:カルフォルニア・モントレー湾」に登場するゴマシオアザラシのアップはすごく可愛い!
ダイビングをする方は特に気に入るDVDだと思います。(ダイビングをしない人でも感激すると思います。)
使用されている音楽の選曲は、透明感のある心地よいサウンドで良いと思いました。
全編43分と短いのが残念。永遠に続いていて欲しい映像ばかりです。
最低でも1時間の長さ(あと3曲分程)あると嬉しかったです。
来客時のBGVでヘビロテします!
大貫妙子 ライブラリー
ベスト盤というか、アンソロジー(選集)。本人による選曲、全曲解説。1999年の「History」(BMGファンハウス)と比べると、幅広い選曲。それもそのはず、ナイヤガラ(ソニー)、クラウン、ファンハウス、MIDI、東芝EMIを縦断している。リマスターはONKIO HAUSの中里正男氏。音質は古い録音も古さを感じさせず、自然でバランス良し。
「若き日の望楼」、「新しいシャツ」と続けてアルバム「ロマンティック」独特の線の細さが良い。解説にもあるが、若さは未熟であっても、かけがいがない。
続く「黒のクレール」は、吉田美奈子さんの「BLACK Eyed Lady」、ラジさんの「ブラックムーン」とあわせて、キャンペーンに使われたもの。CMタイアップという状況とかみ合って、3曲の中では一番目立っていた。このあたりから、線の太さが出てきた。名曲。特に「いつか風にくちてしまう」の、ひらひらと下降していくメロディーは圧巻(坂本龍一氏は恥ずかしかったらしいと知って、2度びっくり?)
「横顔」「突然の贈りもの」は、「pure acoustic」のバージョン。特に「突然の贈りもの」はレザ・パネのピアノと相まって、彼女のベストの作品だ。必ず、聴くこと。
2枚目の「美しい人よ」はシングルバージョン。小倉博和氏のアコースティックギターと朝川朋之氏のハープが、オルゴールのように心にしみる。このアルバムも後半に入り、感じることは、ミュージシャン一人一人が音楽を大切に楽しんでいること。繊細さとおおらかさが同居している。
「Shall we dance?」は徳間ジャパンのサントラから。
映画「東京日和」の「ひまわり」は作詞、作曲。ここでも小倉博和氏のアコースティックギター、いいですね。でも、他の曲と比べ音が違う。サントラそのものの音作りなのか。もう少し、音を変えて欲しいところ。
「Beautiful Beautiful Songs/歌が生まれてる」は、奥田民生氏、鈴木慶一氏、宮沢和史氏、矢野顕子さんと2000年夏に行ったコンサートから。「LIVE Beautiful Songs」としてEMIから出ている。内容は即興的なのだが、バックボーカルは鈴木慶一、矢野顕子というところが貴重?
「あなたを思うと」は、小倉博和氏と佐橋佳幸氏のアコースティックギター、林立夫氏の優しいドラム。アルバム「note」も聴きたくなるような、すばらしい演奏。
ボーナストラックは、同じく小倉博和氏と佐橋佳幸氏のアコースティックギターで、2001年のライブ音源。
もう少し躍動感が欲しくなるときもあるが、心温まるアンソロジー。
カイエ [DVD]
「カイエ」のLPは聴いていたが当時ビデオがあったことすら知らず、どうしてインストゥルメ
ンタルの曲が多いのか?と不思議に思っていた。今回やっとその映像に触れることが出来て、
あのLPはサウンドトラックであり映像作品の一部に過ぎなかったのだ、と20数年ぶりに納得が
行った。
パリの空気感が伝わる関谷監督のカメラワークと、妙子氏の音楽のコラボレーションは本当に
素晴らしい。ボーカルは効果的に使われるが、「黒のクレール」「輪舞」などでは美しいピア
ノと管弦楽をフィーチャーしたインスト曲がBGMとして映像に叙情感を与えている。
「夏に恋する女たち」のフィルムでは、古びたアパルトマンの上にかかる月や黄昏時に明かり
をともす街灯といった味わい深い「光」をモチーフに取り入れている。
インストゥルメンタルで一番気に入ったのは「ラ・ストラーダ」。大らかな旋律に乗って伝統
美の中に活気あふれるパリの都市風景が映し出されていく。運河にかかる可動橋、公園のベン
チなどの点景が心を和ませる。セーヌ川だろうか、大きな川の畔にたたずむ妙子氏の後姿で曲
は終わる。
「幻惑」ではブルーのモノトーンが印象的だ。疾走する車の車窓に映る夜明け前の空をひたす
ら撮り続けているのだが、曲と映像のマッチングという点ではこのトラックがベストかもしれ
ない。
写真もそうだが、観る者の想像力を刺激するモノクロ(的)作品はカラー作品より印象的だと
再認識させられた。
83年に私の母校の学園祭で歌ってくれた妙子氏はまだ初々しいイメージだったが、当時すでに
「ヨーロッパ3部作」を世に出していた。さらに翌年このようなスケールの大きな作品を手がけ
ていたとは、その稀有な才能にあらためて驚くほかはない。
なお「カイエ」サントラ盤以外のアルバムから収められているのは「幻惑」(SIGNIFIE)「夏
色の服」(Cliche)の2曲である。
心の垢を落としたい時や元気を取り戻したい時など、就寝前のDVDプレーヤーにセットするのに
最適な1枚だと思う。
ピアノ曲集 大貫妙子 Library~Anthology 1973-2003~ (ピアノ・ソロ)
大貫さんの楽譜としては、他に「大貫妙子 ピアノソロ弾き語り」というのも出ていて、重複している曲もある。どっちを買ってもいいとは思うけれど、「ライブラリー」というCD(2枚組で彼女の解説付きベストアルバムで5つ★でお勧め)と連動しているので、こっちを買ってもいいだろう。それにこっちの方がボリュームがある。ちなみに私は両方持っている(病膏肓に入る)。こっちの方が「若き日の望楼」が日本語歌詞で好もしい(大貫さんはこの歌詞が恥ずかしいというのであるが)。アムール・ルヴァンの歌詞はちょっとピンと来ないから。いい曲ばかりで、本当に私が言うのもなんだけれど、詩人としても作曲者としても歌手としても素晴らしい方だなあと感心しなくてはいられない。ター坊、これからもがんばって!・・・と書いたのが2004年。今は2008年。相変わらず、すごい音楽。昔の曲も、新しい曲も。