イギリスから来た男 デラックス版 [DVD]
いわゆるアメリカン・ニューシネマで活躍したT・スタンプの復讐劇。
と言っても私はそんな彼の過去を知るべくもなく、
「プリシラ」で演じた、悲哀度全開の熟年ドラッグクイーン役が忘れられなく、今回取り寄せて観てみた次第です。
まぁ、ストーリーとしては特にヒネリもなく淡々と進んでいきますが、
何と言ってもスタンプの立ち居振る舞いがカッコ良い!渋い!
スタイリッシュ・オヤジここに極まれり、という感じです。
個人的にはフォンダの邸宅で彼と初めて目を合わせた時の
スタンプの表情が忘れられない。
内に秘めた復讐心と悲哀とが織り成す横顔...。
一見の価値ありです。気概のあるオヤジを目指す全ての人々に(笑)
チベットから来た男 世界探偵小説全集(22)
チベットに興味を持つ富豪が、自宅にある趣味で集めた品々を陳列してあるチベット美術室で殺される。場所はチベット密教の恐怖の死神、夜摩天の像の前、しかも美術室は密室状態だった。無断で邪まな心を持ったまま、密教の秘儀を行った報いなのか・・・。密教や秘儀や呪いといったものが、事件の謎や周りの雰囲気を盛り上げていて、読んでいてゾクゾクしてきます。
この殺人事件が起こるのが物語も中盤を過ぎたころ、それまでは(もう一件殺人事件が起きますが)これでもかとばかりにチベットやチベット密教に関する記述にうめつくされています。これが「西洋人の描くヘンな東洋」ではなく、探検家の語るチベット探検紀行などとてもおもしろい。登場人物も殺された男をはじめ、考古学者にして探検家でチベットに造詣の深いその弟、チベット人の秘書、チベットからきたラマ僧と、徹底的にチベットにこだわっています。巻頭に載っている参考文献を見ると、作者はよくよくチベットについて調査したんだろうな、と頭が下がる思いがします。たかがミステリ、されどミステリ、そのこだわりと意気込みや良し!
「不思議の国チベット」に彩られた雰囲気、事件の不可思議な謎とその論理的な解明、魅力的な探偵といいとこだらけなんですが、ただ一つの難点は殺人の方法、あんなこと本当にうまくいくのだろうか?ちょっといただけませんでした。
巻末の解説には、著者の著作リストと概要が載っているんですが、そのほとんどが真っ向勝負の本格ミステリらしく、あらすじだけでどうしても読んでみたくなります。こんな人の心をくすぐるような解説を載せたのですから、出版社は責任をとって全作翻訳出版してください!
ブラジルから来た少年 [DVD]
もしも現代にヒトラーが現れたら?それも93人も。
西洋人が持つヒトラーアレルギーをSFっぽい観点から製作した面白く、スリリングな作品。
南米に逃亡したメンゲレ博士はすでにクローン技術を完成させていた。
ヨーゼフ・メンゲレにグレゴリー・ペック、そのメンゲレの計画にいち早く気づくトップ屋にスティーブ・グッテンバーグ。
面白い顔合わせでしょ?
『月に囚われた男』『地球に落ちて来た男』DVD-BOX
地球の ルナ産業から 月へ派遣された サムは、月のエネルギー資源 ヘリウム3を取り出し、精製して地球へ送る(ロケットで飛ばす)のが仕事。 体力トレーニング、植物への水やり、ミニチュア町作りなど 規則正しい、しかし孤独な月での生活も 残りわずか、というところでアクシデント。
その後、忠実だったはずの 唯一の話し相手 コンピューターロボットのガーティーも 何か隠している様子で、、、。
デビット・ボウイ の息子 ダンカン氏の監督デビュー作品「月に囚われた男」と
父 デビット・ボウイ主演「地球に落ちてきた男」 33年前の劇場パンフ(カラー印刷)縮尺版附き
生まれ故郷に妻子を残す男達のストーリーという共通点も あるのかもしれない。
「月に囚われた男」 低予算の中、いかにして製作したか や 月面映像の撮影について、そしてストーリーをより深く理解するために 映像特典の監督インタビューは必見。
ベスト・ベートーヴェン100
CD6枚組、7時間38分。構成は、1.交響曲、2.協奏曲、3.ピアノ独奏曲、4.弦楽器やフルートなどのソナタ、5.室内楽曲、6.歌曲・オペラとなっている。演奏はカラヤン、ベルリン・フィル、フィルハーモニア管弦楽団、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団ほか。演奏・音質は、「安かろう、悪かろう」ということはなかったが、曲の収録方法として、一つの楽章や冒頭・終結部の抜粋が非常に多いのが残念だった。
やはりベートーヴェンといえば、演奏時間が比較的長い交響曲に有名な作品が多いことから、100曲収録する上でネックとなるのはある程度仕方ないと予想はしていたが、9つある交響曲の内、全楽章を聴けるものは一つもない。特に第9番で、徐々に盛り上がって来るはずの第4楽章が途中で分割され、かなり唐突な編集で繋ぎ合わされている部分は何度聴いても興醒めする。少なくとも代表作に関しては、曲数を減らして完全収録するか、せめて一つの楽章は最後まで収めて欲しかった。
また、交響曲に比べれば短めのピアノソナタでも、全楽章収録されているのは第8番「悲愴」のみ。それ以外の「月光」「ワルトシュタイン」「告別」「熱情」などはすべて1つの楽章からの抜粋となっている。CD6枚のうち1枚を歌曲・オペラに充てているが、ベートーヴェンの作品としてはさほど重視されないことが多く、「フィデリオ」からの8曲を含め、帳尻合わせの印象は拭えない。ここは割り切って、最後の1枚も交響曲やピアノなどに回す方法もあったと思う。販売戦略上、100曲収録にこだわったのかも知れないが、それならCDを10枚ほどに増やすか、曲数を厳選して全曲聴けるようにしたほうが良かった。
とはいえ、ベートーヴェンの曲で日頃耳にすることが多いメロディや有名なフレーズはだいたい網羅しており、音質のバラつきもそれほど大きくない。個々の演奏のクオリティも一定水準をクリアしている。色々な演奏家をすでに何枚も聴いている人が改めて購入するには少し物足りないかも知れないが、ベートーヴェンが好きな人がカタログ的に気軽に聴くには悪くないCDといえる。