探偵神津恭介の殺人推理11~密室から消えた美女~ [DVD]
近藤正臣主演の神津恭介シリーズ最後の作品。電車内での不可解な殺人、マンションでの密室殺人等どちらかというと地味な感じの作品である。
しかし、ストーリー自体は丁寧に伏線を拾って収束する形を取る本格ミステリーの王道。設楽りさ子(当時)の初々しい演技も見もの。
近藤正臣がいつになく気障な神津恭介を演じていて、最高だ。昨今のライトな2時間サスペンスと比べて丁寧な作りがなされている。地味だが、有終の美を飾るにふさわしい作品。
恋スル古事記
古事記から選ばれた物語が5つ。
なんともおおらかな作風でこころが洗われる。
作者は近年長らくスランプだったようだが、復活を強く印象づける。
物語にそのつど解説漫画を付随させるアイデアが素晴らしく、自身が教養のある作者(=國學院大學で折口信夫などを研究していたようだ)にしか出来ない技で、類書と一線を画す。
描き込んでいない画風に拍子抜けする読者もいるだろうが、これは貴重な完成度の高い漫画(書下ろし)である。
見晴らしガ丘にて完全版
『極楽ミシン』に続いての近藤作品はこれを読んでみました。
日本の至る所にありそうな町、見晴らしガ丘に住む老若男女のお話です。
要領よく華麗に生きている人間は一人も出てきません。
過去に悔いを残している人、なかなか大人になれない長男、夫に不満のある主婦、婚期を逃しつつある女性、ふがいない子供を見守る親たち・・・みんなどこか過去の自分や、自分の周りの人に重ね合わせて読むことができるのです。そして、ご老人の登場する話では未来の自分の片鱗を見る気がします。
身につまされるお話も、近藤先生の絵と、読者を追い詰めない「遊び」のあるセリフで、「そんなあなたでいいんだよ」と言ってもらっている気持ちになれます。
カラー版 20世紀の美術
ピカソのある一時期の一作品を観るだけで、すぐさまその価値を理解できる人は少ないだろう。それにはある程度理詰めの学習が必要とされるからだ。しかし一度ピカソの生涯に亘る作風の変遷と、その当時の社会的あるいは美術的動向に目をやるなら、そうした作品の必然性と彼の美学を受け入れることができるはずだ。デュシャンの『泉』ではサイン入りの便器が芸術作品に成り得るとすれば、その理由はその時代の社会背景と彼の思想にある。20世紀美術を理解するには、視覚や個人の美的感覚に頼るだけでは不充分で、アーティストのイデオロギーの流れを知ることが不可欠になる。というのもこの時代の芸術家たちは自ら改革者、あるいは伝統の破壊者としての自覚を持って作品の創造に携わっていたからに他ならない。
本書は加速度的で、また同時多発的な現代美術史の動向を平易に、しかも話題に上る画家や彫刻家の作品を、小さいながらも最低一枚のカラー写真を掲載して解説しているところに特徴がある。また巻末には美術史の系譜と掲載された作品のデータ、それに簡単な用語解説集と参考文献及び人名索引が付けられた懇切丁寧な編集になっている。