パレード (幻冬舎文庫)
読んだあと、無性に他の人の感想を聞きたくなりました。
「こわい」などという一言に丸め込んでしまうのは、あまりにももったいない気がして
何に怖さを感じたのか、どこに共感できるか、あるいは嫌悪するか
おそらく人それぞれ微妙に違うであろう読後感を知りたくなる、魅力的な小説でした。
魅力的ではありますが、決してグイグイ引き込まれる小説ではありません。
4人の男女が色恋抜きのちょうどよい距離を保ちながら共同生活をする物語は
海外ドラマのようにクールで楽しげですが、特にこれといった事件が起きるわけでもなく
読んでいて少し退屈、だけど面白いという感じです。
登場人物も軽薄でつかみどころがない感じなのですが、それぞれがモノローグで語る本当の自分は意外に真っ当で
馬鹿そうに見えるけど、実はいろんなことを考えているんだねと共感したくなります。
そうやって軽く読んでいるうちに、不思議な違和感が胸に広がってきました。
人に見せている自分と、本当の自分との食い違い
他の人をどこか見下しながら、それに合わせて自分を演出して作るやさしい空間の空虚さ
気楽なドタバタした日常の描写の中に、その違和感が少しずつ広がっていくのがたまらなく不気味で
だから最終章で物語ががらりと転換したときには、こわいというよりも、安心感すら感じました。
退屈だけどスリリングで、現実感がないのにリアル。すごい小説でした。
邦楽ニューウェーブ
「御座敷芸か生活苦の叫びの化石」と化していた日本音楽が、西洋音楽を子守唄に聴いて育った世代により遺伝子操作を受け、再起動し始めた感じの 世界に発信できる、生きた日本芸術の躍動開始を感ずるアルバムです。
これからの彼らの活躍に期待したい!。
海外への御土産にもお勧めです。
あの空の下で (集英社文庫)
『あの空の下で』は短編集だったので、1日1作品ずつ通勤時に読むのにちょうどいい長さでした。でも、困ったことがひとつ。普通の恋愛小説だったら「ここ、泣くとこ?」と心構えができているので大丈夫なのですが、『あの空の下で』では予期しないところにグッとくるフレーズがあり、「あ、まずい!」と思ったときには鼻の奥がツーン、涙がほろり。慌ててうつむきハンカチを出しました。
どの作品が好きかと誰かに聞かれたら、迷わず『自転車泥棒』と『恋恋風塵』を挙げます。趣向のまったく異なる作品なのですが、両方とも読み進めるうちに心にざわめいて落ち着かなくなり、読み終わった後もしばらく、頭の中でグルグルと物語の断片が浮かんでは消えていました。両方とも身近なことを題材にしているのに、とても印象的なストーリーです。
『あの空の下で』にはさまざまな主人公が登場し、悩みながらもポジティブに進んでいきます。そういう姿が自分と重なるときもあり、ずいぶん勇気づけられました。自分の環境が変わったときに読み返したら新たな発見があると思うので、すぐに手にとれる場所に置いておきたい本です。
7月24日通りのクリスマス [DVD]
私は中谷美紀演じるサユリが妄想女から現実の恋に前向きに向き合っていく所に共感を覚えました。
サユリの服装が地味な服で眼鏡をかけていたのが憧れの人聡史と久々に再会してオシャレしてメイクもして少しずつ女らしくなって行く。恋愛成就に向けて頑張るサユリにエールを送っていました。最初は
大沢たかお目当てで見に行ったんですが中谷美紀のヒロインサユリに共感している自分がいました。
見に行って心がほっこりしました。感動しました。
横道世之介
映画と写真の世界を行き来する様な感覚の作品でした。
内容は深いとはいい難いですが、また読み返したい、日曜日の午後に読みたい、という感じの作品に仕上っていると思います。
吉田修一は80年代がとてもよく似合いますね。
彼の作品は、額縁に飾りたい様なしゃれたものだといつも思います。
世之介を取り巻く人々の20年後(現在)の回想シーンがとても印象的です。
できちゃった結婚して退学した倉持と阿久津唯の現在、お嬢さんがアフリカで難民支援をしている祥子ちゃん。
確かに、20年の時間を経れば人って変わるのだろうな〜と、妙に納得です。
映像的な作品でとても彼らしい作品に仕上っているのではないでしょうか。
だって、大好きな祥子ちゃんに「じゃあ日常でも切り取ります?」と言わせてるんですもの☆
世之介がカメラマンになったという運びは、吉田修一ファンなら納得なのではないでしょうか/
もう500ページ読みたいと思わせる、日曜日に最適な作品です。