このゲームは、幕末を知るには、良いゲームだと思う。史実上の人物としては土方歳三と坂本龍馬の2人でしかプレーできないのだが、それぞれの行動しだいでは、史実以外のシナリオで楽しめる。例えば、龍馬は死なないように暗殺回避をする。だとか、土方歳三ならば、函館で戦死しないように、進めることもできる。史実通りに進んでも、また楽しい。他に、話し合いはカードで行われる。このカードの内容は、史実のものだから、解説を読むと、とても勉強になる。幕末好きの、私はとても気に入った作品である。また、フリーキャラクターでプレーしても、楽しい。
軍歌メモリアル~明治維新から130年~
軍歌のCDと言っても単品では曲数が少なく、様々な曲を聴きたいと思ってもなかなか集められなかったりするのですが、このCDは5枚組100曲ですので、有名な軍歌はほとんど収録されていると思います。演奏や、それぞれの歌い手及びキング男声合唱団の歌い方に対する満足度は人それぞれかと思いますが、やや迫力に欠けるかなという個人的感想を受けた以外は、非常に良いCDだと感じました。とにかく沢山の軍歌を聴きたいという方にはお薦めです。
戊辰戦争―敗者の明治維新 (中公新書 (455))
戊辰戦争について、敗者側からの視点でかかれた書。1977年の初版発行以来、増刷を繰り返している名著。
著者は戊辰戦争を、異なる統一国家構想をもつ勢力同士の対立としている。そして、幕府側には不要な戦争だったが、専制的性格をもつ新政府側に不可欠な戦争だったとする。
本書は徹頭徹尾、一般書である。それは、一般的な日本史の知識があれば、楽しめるように書かれているという意味である。 一般書であると言っても、著者の深い見識がちりばめられており、水準はとても高い。 流石は幕末史の大家の著書である。
幕末に興味をもつ全ての人にお勧めできる良書である。
明治維新 1858-1881 (講談社現代新書)
『明治維新 1858-1881』。実にシンプルなタイトルである。サブタイトルがないので、注目されることもなく埋もれてしまうのではないかと心配だ。
しかし、内容はきわめて斬新だ。何よりも明治維新をみる視点が斬新である。内容的には埋もれるどころか、ロングセラーになりうる本だといえよう。
本書は日本人のためだけに書かれたものではない、ということが重要だ。英語版に先行して、この日本語版が出版されたという。明治維新はもちろん日本人自身の歴史ではあるが、日本語使用者にしか理解できない日本史特有の歴史用語を、開発経済学の用語で言い換えることによって。国際比較という観点からみた明治維新を記述することが可能となった。
開発経済学の立場からみた「明治維新モデル」が、果たしてアジア・アフリカの発展途上国にとって、いったいどこまで参考になるのか、あるいは参考にはならないのかという問題意識のもとに始められた、日本近代政治史の重鎮との共同研究の成果である。
最新の研究成果を縦横に駆使して、非常に明晰な文体で書かれた政治経済史である。
本書の構成を紹介しておこう。
第一部「明治維新の柔構造」
明治維新というモデル、柔構造の多重性、明治維新の指導者たち、政策と政局のダイナミズム
第二部 改革諸藩を比較する
越前藩の柔構造、土佐藩の柔構造、長州藩の柔構造、西南戦争と柔構造、薩摩藩改革派の多様性と団結、薩摩武士の同志的結合、柔構造の近現代
第三部 江戸社会−飛躍への準備
日本社会の累積的発展、近代化の前提条件、幕末期の政治競争とナショナリズム
本書のキーワードは「柔構造」である。柔構造というと、私はかつて一世を風靡したエコノミスト竹内宏の『柔構造の日本経済』を思い出すが、幕末の「改革諸藩」を「改革諸藩」たらしめた特徴が、この柔構造の組織体であったという指摘は非常に示唆に富んでいる。
変革の行動単位であった改革諸藩においては、かつて強調されてきたような下級武士による革命というよりも、強い経済力に裏打ちされた軍事力をともなう「藩」を行動主体として、機を見るに敏な藩主と実力本位で登用された下級武士たちとの連携プレイがうまく機能していたことが強調されている。プレイヤーたちそれぞれの、状況の急変に応じて、悪くいえばいい加減、よくいえば融通無碍(ゆうづうむげ)な行動による離合集散や合従連衡を繰り返しながらも、大きな政治改革を破綻させることなく、最後まで遂行させる原動力になった。著者によれば、これは日本近現代史においては以後みられぬことだけに、驚嘆すべき歴史的事象なのである。
とくに、変革の主体であった政治エリートたちの人物に焦点をあてており、彼らのあいだで交わされた書簡の内容を見ることで、いかなる情報共有が行われていたかの記述は興味深い。とくに「基本的価値観を共有した多様な意見の柔構造」であった薩摩藩の事例がきわめて興味深い。
明治維新を可能にした経済的、知的インフラ要素についての本書の記述を読むと、この時点において、植民地となることなく、日本人が自らの手で政治変革を実行しえたことは、世界史的な意義をもつ出来事であったことが十分に理解されるのである。
中国でも、朝鮮(韓国)でも、明治維新のインパクトがいかに大きなものであったかは、中国史家の岡田英弘などが以前から指摘しているとおりである。毛澤東だけでなく、'ケ小平もつねに明治維新を意識していたのである。現代でも、アジア・アフリカの発展途上国では、「明治維新」は十分にモデルたり得るだろう。ただし、モデルとしての普遍性、特殊性について十分に分析したうえでの検証が必要だろう。
最近の新書本では珍しい、読み応えのある一冊である。
近代日本史に関心のある人だけでなく、発展途上国問題に関心のある人もぜひ一読、いや再読、三読したいものである。
一外交官の見た明治維新〈上〉 (岩波文庫)
イギリスの外交官アーネスト・サトウ(1843-1929)による、1862年9月から1869年2月に渡った日本滞在時の回想録である。本書は著者の日記から書き起こされたもので、書き漏らされていた部分は自身の記憶と母への手紙などで補われている。また、執筆時期は1885-1887と1919-1921の二期に別れている。
上巻には、日本に赴任するまでの簡単な経緯と、赴任してから1867年5月頃までのことが書かれている。18才で日本に興味を持った著者は好奇心や冒険心も旺盛で、海路よりも時間のかかる陸路で大坂から江戸に帰ったりするのであるが、そうしたことが当時の日本を子細に描写する結果に繋がっている。また、実際に会った人たちの印象をほとんど書き記しているので、徳川慶喜が貴族的な容貌をそなえていたことなどもわかる。もちろん政治的な交渉の場面も記述されていて、明治維新というものを、日本国内から第三者的視点でリアルタイムに描いた貴重な回想録となっている。
(下巻のレビューに続く)