魔王 [DVD]
舞台経験は豊富だが、テレビドラマの出演はスペシャルドラマの脇役か、深夜枠の短編ドラマのみと、知る人ぞ知る役者・大野智。
その彼がようやくゴールデンタイムのドラマの、それも主役、しかもサスペンスで、復讐犯。
はじまる前から世間の評判が楽しみなファンの一人だったが、はじまってしまえば、そんなものを抜きに夢中になった作品だった。
そこには成瀬領しか見えず、作中のどこにも大野智の影はなく、随分と昔の舞台で、狂気に狂った男の演技を見たことがあるが、あの頃から更に成長した役者ぶりに圧倒された。
無機質で感情が無く、その身の内に棲む怒り渦巻く復讐の炎、それが不意に吹く優しい風に揺れる様、根底にあるその人の消せない優しさが滲み出る瞬間や、深い愛と悲しみ、溢れる涙・・・言い表せない感情を自在に表現してみせるその瞳。本当にこの人は底知れないと思わされる。
ストーリーは、表向きは心優しい弁護士・成瀬領が、殺された弟の復讐のため、事件に関係した者たちに復讐していくというサスペンス。
全ての登場人物が知らず歯車となり、一寸も狂わずに彼の計画を遂行して行く。
はじめは、そんなに上手く行くものかと思うが、話を追う毎に、完璧な計画で進む復讐劇に知らず息を呑む。
特に、第六話あたりからの流れ。ここからは流れを切らずにじっくりと最終話まで見てほしい。
人物も、憎しみに満ちた領と過去の罪に懊悩する直人の対峙を中心に、次第に登場人物それぞれの苦悩に満ちた顔がクローズアップされ、それがまた次の悲劇へ連鎖してく。
俳優陣も素晴らしい。主役の二人をはじめ、大御所俳優から若手、子役は勿論のこと、劇団ひとりさんが予想以上のいい演技を見せていて、胸に迫るものがあった。
個人的には、優香さんの演技を、初めて上手いと思った。今でもテレビで見るたびに、思い出すくらい引き込まれた。
惜しむらくは、第一話に登場した二宮くんの役が何かの伏線であれば、より巧妙なサスペンスになり得たのに。
友情出演のためとはいえ、あの役を活かさなかったのは勿体ない。
とはいえ見れば魔王の世界にどっぷりと浸ってしまうだろうこと請け合いのこの作品。
作品へのこだわりはもちろんだが、DVD BOXは装丁の隅々まで凝られている。
特典Diskは物語のキーでもある赤い封筒を模したケースに入れられ、本編Disk6枚に隠れるケース部分にも、話に繋がるモノが描かれていたり、初回版特典のプレミアムブックレットには人物相関図の他、作中に散りばめられた布石が詳しく紹介されている。
(このプレミアムブックレットを入手出来なかった方には、是非とも「魔王」公式サイトをご覧頂きたい。残念ながら人物相関図は下げられているようで確認出来なかったが、放送時に連載されていた“裏魔王”というコーナー記事が冊子内容のおおよそをしめているので、初回を入手出来なかった方にも制作スタッフのコダワリが確認していただけるはず。※2011/1/9現在)
ファンには堪らないコレクターズアイテムとして、魔王族なら買って当然の商品だろう。
蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH【初回限定版】 [Blu-ray]
TVシリーズの終了から早6年、蒼穹作戦(前回のTVシリーズにおける最後の戦い)から2年後の世界を描いたのが今回の劇場版蒼穹の
ファフナーです。
フェストゥム(ファフナー世界における生物を「同化」し消滅させる能力をもつ謎の生命体、TVシリーズでは終版に和解という方向性も考え
られたが、終始人類の敵として描かれる)と人類の共生をテーマにし、真壁一騎、皆城 総士、そしてこの2人を繋げる第3の存在として
劇場版に初登場する来主 操(くるす みさお)の3人を中心にドラマが描かれます。そして今作の劇場版を個人的に「キャラ」「ストーリー」
「映像面」に分けてレビューしたいと思います。
まず始めにキャラクターについてですが一言で表現するならば「成長」です。各キャラともTVシリーズから2年という月日が流れているため
に精神的に大きく成長していると思います。その中でも前回のTVシリーズで臆病風を吹かせていた剣司の精神的な成長は何か感じるものがあります。
容姿でいえばカノンは髪も伸ばして、かなりシャープな顔立ちになったかなあと思います。
そして、今回の劇場版には新世代のファフナーパイロットも出てきます。前回のTVシリーズでフェストゥムと死闘を繰り広げた先輩パイロットとの
掛け合いはなかなか楽しめます。TVシリーズでは先輩パイロット達もまだまだ青さがありましたが、成長したなあと思える瞬間です。数々の友の死
(正確にはフェストゥムに同化され存在が消滅)を乗り越えてみんな人間的に強くなったようです。
その他にも、キャラについてはサプライズ的なものもあります。前回フェストゥムに同化されたあのキャラが!?・・・・・ry)
次にストーリーについてですが、物語の芯となるのは冒頭で前述した通り真壁一騎、皆城 総士、来主 操の3人が中心となって進んでいきながら、フェ
ストゥムと人類の共生を描いていきます。フェストゥムとのバトルシーンも多いので、ストーリーが中だるみせずに、テンポ良く進行していると個人的
には思います。
最後に映像面についてですが、クライマックスも含め要所要所の戦闘シーンは手描きの作画とCG(ファフナーはほぼすべてCGで表現しています)を
うまく融合させ迫力のあるメカアクションが描けていると思います。多少評価し過ぎかもしれませんが、新劇場版エヴァンゲリオン 破 に近いもの
はあるかと思います。私事ですが、作画よりも撮影(CGI)のほうが大変だったんじゃないかと思っています・・・。
ついでですが、メカについてもレビューしておきます。今回登場するファフナーは新型機を始め、前大戦で使用した機体に新しいパーツを換装するなど
してデザインが一新されているので非常に素晴らしいです。特に新しく開発されたファフナーマーク・ドライツェンのデザインが個人的にかなりお気に入り
です。早く立体化されないかなあ・・・。
以上、少し長文となりましたが参考になれば幸いです。
イキのいい奴 1 [VHS]
「女が泣いてちゃ、ご飯はできないよ!」
昔、NHKで放送されていた、小林薫主演、「イキのいい奴」というドラマがあります。
これは、その中で、大女優、松尾嘉代扮する東京下町のおかみさんが言うセリフですが、私にはどういうわけか、この一言が、大変、印象に残っております。
(「続・イキのいい奴」の方だったかも・・・。)
時代設定は、ALWAYS・・・まさしく、昭和27〜28年頃の東京の下町を舞台にしたドラマでしたが、冒頭のセリフを言った松尾嘉代さんの役は、少し、年齢不詳気味でしたが、夫役の若山富三郎さんが、60前後といったところでしたから、50歳くらいだったでしょうか。
祖母の年代でしょうか、思えば、その時代、その年齢の人は、それまでに、死ぬほど涙を流してきてるんですね。
まさしく、今のイラクやアフガンと一緒で、我が子の死を見、友人知己の死を聞き、家を焼かれ、食べるものもなく・・・。
ドラマではそこまで言ってませんでしたが、言わないのが当たり前で、誰もが経験している当たり前のことなのですから、わざわざ、取り立てて言うようなことではなかったということでしょう・・・。
一方で、主演の小林薫が演じた寿司屋の親方にも、その時代の空気が感じられましたよ。
思えば、うちの祖父などがそうだったような気がします。
そう、いわゆる、「昔気質」ってやつですね!
そういった人間模様を通して、かつて、この国にあった古き良き時代を見事に描ききったという点で、こういったノスタルジーものの中では、傑作中の傑作と言ってもいいのではないかと思っています。
「女が泣いてちゃ、ご飯が出来ないよ。」
コンビニ行けば・・・って言われますかね(泣)。