The Fountainhead
9.11事件以後、アメリカ政治に興味を持ち、副島隆彦氏のサイトで紹介されていた『水源』を知っ
た。作者のアイン・ランドが提唱した客観主義という思想は、リバタリアニズムと呼ばれるラディ
カルな自由主義に属し、個人の自由と平等と幸福の追求の権利を守ることだけが政府の機能とする
最小国家を支持するものである。この本の主人公ロークは、独創的な考えを持つ天才建築家であり
彼を通して、人間は決して他人に依存して生きるのではなく、自分の知性から生まれた独立した仕
事によって、自立して生きるべきだということを教えてくれる。
小説の登場人物がそれぞれ魅力的で、読んでいてまったく飽きない。ストーリーも、特に後半は
「次はどうなる?」の連続でおもしろい。ひとりひとりの性格がセリフに表れていて、生き生きと
している。これは翻訳の力に負うところが大きいと思う。「他人のために生きよ」と説く評論家の
エルスワース・トゥーイーのしゃべり方など、あまりに気持ち悪くて(?)背筋がゾクゾクして来
る。マスコミを操作し人々を組織して、ロークの社会的抹殺を画策するところは手に汗握る。
また、主人公が建築家なので、ロークが設計した建物も数多く描写される。それらは自然に溶け込
みコストがかからず、隅々まで配慮されて美しい。建設現場で働く職人に対する作者の視線はとて
も暖かい。ロークは他人に関心がなく、影響されないので冷たいと思われるが、わかる人には彼が
他人を活気づけ、命を与える人間だと感じさせる。彼が建てる建築物もそこに住む人に、人間の智
恵と力を信じ、より良い人生を生きたいと思わせるものなのだろう。
肩をすくめるアトラス
20世紀アメリカベストセラー100選のうち、第1位です。
50年以上前に書かれた本ですが、近未来のことが書かれています。
金価格の下落などは、周知の事実のとおり当時であれば考えられなかったことばかり。
小説ですので、読破するのは大変ですよ。
一読の価値ありです。
Atlas Shrugged
ロシアからの移民のAyn Randがこの小説を使って布教したかったのは、「合理的な利己主義こそが真の道徳の基準であり、利他主義・博愛主義は極めて非道徳的」だという考え方である。ノーム・チョムスキーがRandを「one of the most evil figures of modern intellectual history.」と呼んだのも納得できる。
この本が出版された1950年代は社会主義・共産主義への反感が強い時代だった。ソビエト連邦の脅威にパラノイアを抱くアメリカには利他主義を批判するこの本を受け入れやすい土壌があったのだ。
この時代からレーガン、ブッシュ(父)時代まで、共和党は経済的なエリートの党であった。彼らは「貧しい者は、努力をしないからである。努力して裕福になったわれわれが怠け者の面倒を見ることを強要される福祉対策が社会主義だ。それを支持する民主党を勝たせるとアメリカ合衆国は終わりだ」と信じる。裕福な共和党員の子はこれ以外の見解を知らずに育ち、大学では同じような友人を選ぶ。
それでも芸術を重んじる大学で別の思想に触れたり、外国で多文化の同僚と働く機会があった者は、自分の体験からRandの倫理観の欠陥を読みとることができるようになる。
学生時代に感動したのに20年後に読んで「ひどい」と感じる者がいるのは、体験が思想を変えたからだろう。
それでもアメリカ人と触れる機会のある人は読む価値がある。Randの本に対する相手の反応で、どういう人物かを推測できるからである。
阿蘇 白川水源 10L
注文後、数日で届きました。段ボールの中に(浮き輪の口みたいな)口つきのビニール袋が入っていて、段ボールの口を一部開けて、箱を傾けて注ぐスタイルでした。
総硬度8.5mg(100mg中)、紫外線殺菌だそうです。軟水と言うのでしょうか、ほんのり甘くて、柔らかくて、いくらでも飲めてしまいます。
ストレスが溜まっていて、気分転換においしい水が飲みたい…と注文したのですが、大満足でした。
水源―The Fountainhead
長い!しかし、おもしろい!A5判・2段組・「訳者あとがき」も含めて1037ページという恐ろしい分量だった。早く読み終えたかった。だが、主人公たちの運命の成り行きに引きづられているうちに、物語が終わってしまうのが惜しくなり、終盤を迎える頃には、一つ一つの文章を惜しみつつ、味わって注意深く読んだのだった。
この作品は、確かに「政治思想小説」である。登場人物たちは、ときに強烈な思想を主張する。“日本的”なものとはほど遠いに違いない。だからといって、堅苦しい作品ではないのだ。とにかく緊迫感に満ちた恋愛小説であり、凡百の恋愛ドラマなどが色あせてしまうほどの、深いおもしろさに満ちている。
自分の理想を貫くことにかけては妥協を許さない青年ロークと、人を寄せつけない冷淡な美人であるドミニク−−−この二人の恋愛ほど奇妙な恋愛は、他になさそうである。
愛しあっているがゆえに離れるとはどういうことだろう?
二人はなぜ傷つけあうのだろう?しかも、そのことを当人たちは了解済みなのである。
この二人の愛情はストイックな愛情であり、倒錯的な愛情なのである。
しかし、それで終わっては単なる作りごとだ。倒錯的で観念的な愛を現実のものとするために、主人公たちは意表をつく行動に出る!その行動は犯罪的ともいえるもので、結末のどんでんがえしに驚かされてしまう。
わくわくしたストーリー展開に心が躍らされながら、「よりよく生きる」ということを考えさせてくれる作品だと思った。
私は一気にアイン・ランドのファンになってしまった。この作品をたくさんの人たちに楽しんでもらって、感じたことを話し合いたいと思う。