アカデミー賞を獲る脚本術
ハリウッドで脚本家として名をあげようと野心を持つ読者のために、すぐれたシナリオを書くための極意を指南しようという書です。著者はアメリカの映画界でスクリプト・コンサルタントとして活躍する女性。
脚本家の卵のための入門書というよりは中上級者向けの書ということですが、私のような一映画ファンでも十分楽しめます。
コーエン兄弟がオスカー脚本賞を獲得した「ファーゴ」が、「登場人物を明確に描くための体系的映像」をどのように用いているかについて記した箇所(154頁以降)はなかなか唸らせます。二人組の犯人が凍った雪道の中で凍える様子と、捜査するマージが温かい家庭に包まれている様子を対比させることで、主人公がこの世を肯定的に捉えていることを脚本家は示そうとしたと著者は考えるのです。
このように映画(の脚本)には、観る者の深層心理にするりと入り込む仕掛けがいくつも散りばめられている場合があり、そしてその散りばめ方が見事であればあるほど観る者の心を深くつかみとることができるのです。
そしてまた著者は、脚本家が目指すべきは登場人物たちが成長する物語であると強く信じて次のように記します。
「人間は成長しなければ人生の勢いは衰え、時には止まってしまう。変化がなければ、人間は同じパターンを繰り返すだけで、人生の旅は止まってしまう。(中略)人間の変化とはより人間味のある、自分らしい人間へと変わっていく動きであり、前向きなものだ」。(184頁)
人間を信じる力強さをそこに感じます。映画というものが優れた表現手段であり続けるのは、まさにこうした脚本家たちの信念が背景にあるからなのだという意を強くしました。
なお、巻末に掲げられた映画作品名に先に目を通すことをお薦めしておきます。これは本書で言及されている作品のリストですが、本書はその結末にまで触れてしまっている場合がほとんどだということを忠告しておきます。
アカデミー賞大全集 (DVD 10枚組) BCP-011
この値段で初期のアカデミー賞諸作品を10本も見られるのはとてもお得ですね。私は映画ファンではありませんが、当時のアメリカや欧州の世相等もよく分かり、大変に興味深く見ています。
ゴールド ~アカデミー賞テーマ黄金期~ GOLD
今年のオリンピックは深夜遅くの放送で大変だったけれど、金メダルもいっぱい見れてよかった。一番感動したのは、「日本」「ルーマニア」
と競った、男子体操の団体。体操といえば、思い出されるこのコマネチさんのテーマ曲を収録のアルバムとあらば、オリンピックの記念に、買っておこうかな。
納棺夫日記(中国語)
映画「おくりびと」を見たあと原作があると知り読みました。実際生業とされていた方だけに説得力もあり映画で納棺の作業自体のイメージは理解できていたので現実はいかに過酷であるかも痛感させられました。著者の宗教観もすがすがしさを感じました。悩みを抱えている全ての人にお勧めです。
アカデミー賞のすべて―From 1928 To 2006 (MOOK21)
数年に一度直近の記録を加えた新しい版が出るたび購入しています。まとまっているので、記録を確認したり、振り返るのに便利です。
ただし、肝心の「受賞やノミネートの記録」に関する記載にも誤りがあり、最新版で直されていなくてがっかりしたところもあります。(例:2002年のピーター・オトゥールの名誉賞を「受賞拒否」と記載誤りした点が改版でも直っておらず。当時、事前にそういうニュースが飛び交いましたが、実際は受賞しています)
鵜呑みにせずに、公式記録をINTERNETで調べたりすることも含めて使えば、記録に興味のある方にはよい本です。