フーテン―青春残酷物語 (シリーズ黄色い涙)
下手な映画を観て帰り食事でもして。
でいくらかかると思います?
それに比べてこの「フーテン」は3000円以下で永遠の芸術を手に入れる事が出来る。
しかも何度でも味わえる。
こんな贅沢な事があるだろうか?
良質な娯楽は芸術と呼ぶ事にしている。
永島慎二のこの作品はそこまで昇華した永劫に残る価値ある芸術的遺産です。
ミラクル少女リミットちゃん DVD-BOX
「リミットちゃん」は、三十数年前に確かに見ていた番組だったが、
その後再放送を一度見たきりで、殆ど記憶が薄れていた。
いわゆる「魔女っ子シリーズ」の中では「マイナーな作品」とされ、
私と同年代の知人、友人でも覚えている人は少ない。
当然、今までビデオソフト化されたこともなかった(はず)。
昨年夏、永島慎二氏が逝去された際に「この人はリミットちゃんの
原作者だったはず」と思い出し、それからはネットで検索しまくって
ファンサイトを拝見するなど、久しぶりに夢中になってしまった。
そして今回、ついにDVD化が実現した。一時は「もう二度と見ることが
できないのでは」と諦めていただけに、喜びもひとしおである。
故・小松原一男氏によるキャラデザイン、事故に遭ってサイボーグ化
された主人公等々、魔女っ子シリーズの中では極めて異色な作品だ。
これが作られたのが、高度成長期の終焉となった1973年という点も、
実に興味深い。科学の粋を集めて甦り、超人的な力を得た少女が苦悩し
人間らしい心を求めて葛藤する様は、鉄腕アトムをも彷彿させる。
事情によりビデオ映像からの再録となった初期オープニングは若干
見苦しい点もあるが、本編やパイロットフィルム、第一話予告映像は
三十数年という期間を経てなお鮮明であった。
最近殆ど活躍されていない栗葉子さんや、メグちゃんでブレイクする
前の吉田理保子さんの若き日の声を堪能できるのも嬉しい。
残念な点は、パッケージ及びブックレットの表記である。リミットの
担任は「乙姫先生(通称)」であるが、パッケージとブックレットには
「乙女先生」と書いてあった。そしてリミットが憧れる栗本ジュンの
ブックレット画像は、ジュンとは別のキャラクターが映っていた。
キャラクターの最終チェックを入念に行っていただきたかった。
だが、そうした点を差し引いてもなお、本作品の発売は快挙に値する。
フーテン (ちくま文庫)
永島慎二氏の作品は独特です。
私小説と虚構が織り交ざったようなエピソードと印象的なコマ割り。
抽象画のようなデフォルメされた絵。
文学の世界に太宰治がいるように、ストーリー漫画の世界に永島慎二がいます。
『フーテン』という言葉はもう死語になっているでしょうか。
『男はつらいよ』のフーテンの寅さんが一番有名ですが、フーテンの風俗・生態はこの『フーテン』が最も良く残してあると思います。
瘋癲(ふうてん)という精神疾患を示す言葉だったそうですが、この作品で描かれているような若者が1960年代新宿に現れます。
60年代、ここに描かれた若者は確かにいました。
退廃的であり、芸術的でもあり、無気力であり、平和であり、といった感じでしょうか。
仲間になったつもりはなくてもいつの間にか顔なじみな連中になっています。
時折こういう世界に憧れたワーカーホリックの中年男性が紛れ込んだりしていました。
今でも新宿に『フーテン』はいるのではないでしょうか。
同じような若者達は少しづつ行動形態が変わってゆき、時代時代でいろんな呼び方をされますね。
永島氏は1960年代の一場面を見事に切り取っています。
『フーテン』の発表の場は主に「COM」「ガロ」「プレイコミック」となっています。
「COM」や「ガロ」といった雑誌があって良かったと今更ながら思います。
漫画家残酷物語・完全版(1) (その他)
☆手塚治虫の元アシスタントでもある、『貸本漫画』の代表格にして、孤高の一匹狼漫画家、永島慎二先生の名作。青春の苦悩と光と影を描いた自伝的な異色短編集。誰にも邪魔されることなく、何よりも自分自身が本当に描きたい漫画の為なら、長年連れ添った愛する妻とも離婚し、働きながら死に物狂いで必死にひたすら描く、頑固一徹な漫画家のお話など、日常的な環境の中で繰り広げられる様々な漫画家の生活風景と心理面を焦点において人間模様が表現されている。この作品を読むと、漫画とは単なる娯楽ではなく、むしろ、作家にとっては、血が滲むような努力と執念の熱き結晶でもあり、或いは、涙や汗が凝縮された、一種の芸術品&宝物と断言したい。漫画家という仕事&職業に対するプライドや職人気質を反映した皮肉な諷刺を盛り込んだ、野心的な姿勢にもすこぶる感心した。さて、肝心の作品自体の絵柄は古風な印象を受けるものの、実は些細な部分に綿密な技法が取り入れられており、一見、雑に見えて、実は洗練されたさりげないシンプルさがひときわ光る見事な演出には今読んでも改めて唸らされる。気の配った手堅い配慮がなされた丹念な構成力と並外れた描写感覚も素晴らしい。性格的に面白い単純型のいわゆる、メジャー系の漫画とは明らかに毛色が違う、読者を選ぶ賛否両論の作品かも知れないが、天涯孤独な漫画家、永島慎二先生の等身大的な思想と独特の美学が充分に堪能できる、まさに、伝説のマンガである!★。