七つの会議
ずっと池井戸潤さんの作品は読んでいましたが、『空飛ぶタイヤ』を最高峰として、以降は低調だと思って
いました(※個人の感想です♪)。
池井戸作品の魅力として、具体的な業務の詳細や現場の葛藤のリアルさがあると思います。だからこそ、
現場や業務のあれこれは違っても、それなりに経験のある社会人にとって登場人物に感情移入もし、先々
の展開に手に汗握る部分もあったのだろうと。
しかし、最近の『鉄の骨』や『下町ロケット』(それぞれ映像化もされましたね)、人気が高いシリーズの最新
作『ロスジェネの逆襲』などは、それらがいかにも弱く、定型的な業務の描写に、どこかで見たような勧善懲
悪のプロットで、中盤くらいで、誰が悪として懲らしめられるのか、見通せるような感じで、どうにも入り込めな
いなと感じていました。
しかし、本作では、最近では弱いなと思っていた従来の池井戸作品の良さが戻ってきました。しかも、最後
まで一番悪い奴が誰かは闇の中だし、ヒーローとして立ち振る舞うのが誰かも定まらず(いや、本作にヒーロー
はいないのかも)、これまでのように、早々に「会社」内での善玉と悪玉が色分けされるようなこともなく、久し
ぶりに頁をめくる手が止まりませんでした。
読みながら、「これ、これ!」っていう感じを禁じ得ませんでした。
社会人の方には、自身の業務体験と照らして、ヒリヒリする感覚があるかとも思いますし、個々に述べられる
登場人物の背景には、世の中の広がりを示唆することで、テーマのひとつである「客を大事にしない商売は
滅びる」ということに、一層の厚みを与える効果もあると思います。
久しぶりに、(個人的に想定している)池井戸節を堪能して満足度は非常に高いです♪
従来、池井戸潤氏のファンでありながら、最近の作品に、今一満足しきれないものを感じていたという読者
(そういう方がいらっしゃったとして)には、是非ともお手に取ることをお薦めします。
空飛ぶタイヤ DVD-BOX(3枚組)
これはすごいドラマですよ。
賞をいっぱい取っているというわけではありませんが、社会派骨太ドラマの傑作です。
これを見たら、民放のドラマなんかアホらしく見られません!
ほんと、メッチャはまりました。やばいです!
ロスジェネの逆襲
会社員時代、出向とかありました。
本社の意向とか無視できない立場。そして子会社の人々の対応
そういうのが前半で描かれているので、中盤から後半の流れが
より楽しくリアルに感じられました。
入社試験を受けるにあたり 時代の変化で 楽→難とか
学生などでは どうしようもないときがあります。
勉強は 努力が結果につながるのに 会社員になると
努力しても結果が得られない。また評価が絶対ではないなど
そういうのを実感していると より楽しく読めるのと思います。
ただ、銀行というところが あーいう逆転になるポイントを
見逃すのかな?とも思い少しそこが残念でした。
とはいえ、後半を もっと引き延ばして読みたいなーって
思うぐらいに 一気に読めてしまう作品です。
また、銀行の相手として出てくる企業。
新興企業ならではの 当初の倍々ゲームのような成長。
成長すればするほど、その速度を維持するのは難しいのに
過剰な期待。そして夢をみる経営者
そんな人達への警鐘もかねていたのでしょうかね。
シャイロックの子供たち (文春文庫)
池井戸作品の特徴は、結末のあとにもうひとつの結末を匂わせること。これに尽きる。ほとんどの作品を読んだが、必ず最後に絶妙な一捻りが隠されており、読み手は、それぞれの結末を持つことになる。そこがたまらなくいい。この作品も、短編を重ねながら、本当の犯人は、影に隠れている。断定はできないが、多分、本当の犯人は、あいつかと想像してしまう。
あとは、読んでのお楽しみ!とにかく、一度に読んでしまう作品なので、読む前に、仕事は片付けてたっぷり時間を準備しておくことをお勧めする。
オレたち花のバブル組 (文春文庫)
オレたちバブル入行組 (文春文庫)を読んだのち、本作が文庫本になるのを待ちかねてました。
池井戸潤さんらしい、テンポの良い作品です。
銀行はバブル期に大量に新入社員を雇ったわけだが、バブルがはじけた今、そのバブル入行組は厳しい生存競争の中にいる。自分がいなくても替わりはいくらでもいるのである。競争を勝ち抜くために、やられたら倍返し、派閥の壁を破壊していく主人公は頼もしい。しかし、主人公たちも気づいているように、競争に勝ち残ったとしても、銀行組織のなかで生きていくことには変わりがないのである。