実はこの映画はとても英語がやさしいというこ
とにお気づきでしょうか。SF映画というと辞書に載っていないような奇妙な擬
似科学用語が登場して、かなりの英語通でも聞き取りに苦労する場合があるかも
しれません。しかし、この映画は意外にもそうした表現はあまり出てきません。
しかもみな台詞をゆっくりと話します。エージェント・スミスの英語にいたって
は噛んで含めるような話しぶりです。スミス役のヒューゴ・ウィービングはオー
ストラリアの俳優ですが、決してオーストラリア訛りで話しているわけではない
のでご安心を。 この映画は「不思議の国のアリス」のもじりがあるのですが、それが日本語字
幕ではきちんと訳されていない場合があります。モーフィアスはネオと初めて会
う場面で「ウサギの穴に転がり込んだアリスの気分かね」と話しかけているのに、
「ウサギの穴」という言葉が字幕からは省かれています。この場面と「ウサギを
追いかけろ」という最初にネオに出された指令とがつながっていることを示す台
詞なのですが、字幕では明確ではありません。
さらにいえば、ネオを指して「救世主」という日本語字幕が何度か出てきます
が、もとの英語はMessiahでもSaviorでもなく「the One.」です。あえてOneとい
う言葉を繰り返すのは、Neoという名前のつづりを並べ替えた単語(anagram)だ
からです。
そういったことが英語の台詞に耳を澄ますと見えてきます。ヒヤリングの練習
だと思って繰り返しこのビデオを見ることをお勧めします。こんな面白い映画
なら何度見ても飽きないでしょうし。