アナザー人類興亡史 -人間になれずに消滅した”傍系人類”の系譜- (知りたい!サイエンス)
新聞広告でタイトルがおもしろそうだったので手に取った。
ここ20年、重要な化石の発見が相次ぎ、古生物学が飛躍的に進歩している(移行化石の発見)というが、本書はとくに古人類学上の大発見を元に人類の起源について最新の知見を紹介している。
『自然科学では、ある時期に大発見が集中して飛躍的進展を遂げることがあるが、古人類学もいままさに古今未曾有の大発展期にある(要約)』p8
図版も数多く収録されていて、むろん素人目には個々のガイコツの区別はつかないが、悠久の太古に想像を巡らせるには十分な内容だ。
「アナザー人類」とはおもしろい言い方だが、太古にはもっと多様な「人」が存在した。しかも現生人類と同時期に何種類もが共存していた。しかしいま人類はただ一種しかいない。彼らはどこに消えたのか。なぜ、消えたのか。
『27万〜25万年前に全人類はアフリカで生きていた数千人規模のきわめて小さな集団にまで縮小し、その後のこの集団が持っていた遺伝子的な特徴がその後ふたたび拡大にむかった人類の標準型になった』p245
現生人類の遺伝的特徴は他の生物に比べて極めて均質で多様性がない。そのことへの、これが有力な仮説だそうだ。つまり現生人類もかつて絶滅の危機に瀕したことがある、ということである。
『ヒトはこの時点まで、適応したものが生き延びる(適者生存)ではなく幸運なものが生き延びる(運者生存)という進化の大原則に縛られた存在でしかなかったのである』p249
我々(=の遺伝的形質)が生き残っているのは、単に運がよかったからであって、環境に適応したとか他種に比べて優れていたからではない、ということの証拠のひとつだろう。生き残っているのは優れていたからに違いない、というのが、ダーウィン流進化論の基本スタンスだが、やはり眉つばである。神さまはサイコロを振るのだ、と思った。
ベスト・オブ・10cc~ヒストリカル・ヴァージョン
クィーンなどミュージシャン仲間からも注目されたバンド10CCのベスト。
選曲をみるとやはり「オリジナルサウンドトラック」と「愛ゆえに」の好セールスを記録した2枚からの選曲が多い。
当時のライブではダブルドラムでレコードどおりの音を再現してたりと通好みなバンドだった。
初期のラバーブリッツ等も網羅しているのでメロディーメーカーからサウンドクリエーター的進化を遂げたバンドの歴史を感じることができる。
バンド分裂の歴史からして、個人的にはゴドレイ&クレームの曲(在籍中だが)が入っているのが結構不思議だったりする。
最近のドラマ主題歌ブームもクィーン→ELOと来て次は10CCという線も出てきたような気がするが・・・
ネアンデルタール
初めてネアンデルタール人たちが登場する場面はかなり刺激的でどきどきしました。
が、物語が進むにつれて、かなりはちゃめちゃになってゆく印象です。
この作者は絵画的な表現が得意なようですが、他人の目がリモート・コントロールのカメラのような役割をして自分に見える、という設定は、面白くするためとは言え、やりすぎだと思いました。人はカメラ付きのロボットじゃないんですから…。
この術を習得しようとして修行に励む場面は、映画のスター・ウォーズあたりを連想させます。
で、最後はインディー・ジョーンズその他の映画と同様、すべてはガラガラと崩れてしまう、というアメリカの伝統芸能の決め事通りです。
現生人類はずる賢いから彼らに勝てた、という解釈も、ものごとを故意に悲観的に見るポーズのように感じられます。(彼らの能力の設定がかなり空想的なので、その結末にもいまいち説得力がない)
人類進化の700万年 (講談社現代新書)
人類がチンパンジーとの共通祖先から枝分かれしたごく初期に持っていた特長は,「直立二足歩行」と「犬歯の縮小」の2点。
2002年にチャドで発見された「サヘラントロプス・チャデンシス」(700〜600万年前)は,最古の人類化石であり,犬歯の縮小などから人類の一員と判断できるが,直立二足歩行をしていたかどうかは決定的な証拠がないらしい。
我々は,何となく,猿人→原人→旧人→新人と直線的に進化してきたように思ってしまうが,実際には進化は複線的で,複数の種類の種が併存的に存在していたらしい。
例えば,新人(現生人類)は,概ね20〜15万年前のアフリカにいた女性(ミトコンドリア・イブ)が共通の祖先であり,以後,世界中に広がったと考えられている。約4万年前にヨーロッパに移住した現生人類がクロマニヨン人だが,ネアンデルタール人(旧人)と共存していたらしく,両者の交流を示唆する痕跡があるという。ネアンデルタール人は3万年前に絶滅したが,絶滅の理由はよく分かっていない。
他方,インドネシア・フローレス島には,1万2000年前まで,ジャワ原人の子孫と考えられる小型人類が生き残っていたらしい(2004年に発表された)。ジャワ原人より小柄で脳も小さいが,ネアンデルタール人の石器より高度な石器を作っていた。小型人類がどこからフローレス島に渡ってきたかは不明だが,1万2000年前の火山噴火で絶滅したと考えられている。
本書は,現時点ではどこまでが分かっていて,どこからがよく分からないかを明らかにしながら,人類進化を分かりやすく説明してくれている。強く一読をお勧めしたい。