ちさ×ポン 5 (集英社文庫―コミック版) (集英社文庫 な 48-5)
千砂とポン太の関係が修復したと思ったら、一難さってまた一難。ポン太の前になぞの家出少女が現れポン太を誘惑する。さてそれはよいのだが、その少女が千砂の生き別れた父親の義理の娘という展開はちょっとご都合主義という気がしないではない。その少女とポン太との関係に気を揉む千砂の精神的葛藤もやや掘り下げが浅く、最後にその父親が現れ一騒動起こすなど、ストーリの運びもやや強引で無理がある。1~4巻まではかなり自然に流れていたのだが、話の展開に若干苦慮しているような感じも伺える。
ただ、ポン太が千砂を勝手に美化したり、千砂がそれにこたえようと自分を繕ったりするところがあって、二人が未だ表層的な部分でしかつながっていないことを感じさせる。今後、二人が肉体的な部分を越えていかに深くつながってゆくのか作者の手腕に期待したい。
ヘタコイ 10 (ヤングジャンプコミックス)
月イチ連載で4年半越しに及んだ「ヘタコイ」が、ついに完結しました。
思えば長かった。
1巻でかなり過激な出会いが仇となって同極どうしの磁石のようにすれ違い、
2巻で周囲の圧力と互いの人柄にふれて少しづつ接近し、
3巻は温泉ホテルでのバイトで一気に近寄った(ご隠居こと)静と女先輩・流香の仲。
(今読み直してみても、2・3巻がいちばん楽しく読める)
互いのもと片恋相手が恋敵として現われ、ふたりの「恋の糸」をもつれさせて切り裂いた4巻から7巻では
さすがに「中野先生とYJ担当、アンタら鬼か!!」と思わずにいられなかった。
(おおかたの読者はこの苦痛な展開で一度は離れたのでは)
周囲をさんざん掻き乱した揚句二人そろって出国する8巻冒頭でやっと修羅場に終止符が打たれ、
傷心のまま「友達の関係」としてふたりの繋がりが辛うじて保たれる中、流香が静かなアプローチをかける8巻。
幼なじみの琴乃と彼女の同級生・五十嵐の片恋の行方と、流香の就活と静の学祭活動を通じて再び距離が近付いた9巻。
そして今回。
温泉ツアーでお互いがふたたび告白しようとするものの流香が秘湯探索中に遭難し、
救出に向かうものの風邪のまま全身雨に濡れて意識不明に陥った静……
“そこまでやるか!”と思うほど最後の最後まで波乱(妨害?)だらけだったけど、上記タイトルにやっとたどり着きました。
静が流香へとった態度(5巻)は彼の誤解が元だったことに8巻末で明らかになったにもかかわらず謝りと再告白を先延ばしして、
展開は情けないくらいダラダラ伸びてゆくが、無事大団円に着地できたのは、
やはりいじらしいほどの流香の“ご隠居ひと筋”の想いに尽きると思う。
(個人的にはラスト3話くらい静が男を上げてヘタレから脱皮し、波風ない最終回にしてもよかったのでは)
さらには身を焦がす流香の姿、静と心も身体もひとつに結ばれた、恍惚の完結編「イロコイ」。
流香、よかったじゃん(相当いろいろあったけど)。 お幸せに。
「余談」
1:巻末あとがきには「ヤンジャン」誌での性描写規制が厳しくなった事が述べられていますが、
過剰な『東京都青少年健全育成条例』が少なからず影を落としているのではないでしょうか。
(そのくせチンピラ・ヤクザが主役のバイオレンスものやグロテスク描写のSFものはノーチェック同然で、明らかに不公正だ!)
コミックから何が善で何が悪いのかを自力で学びとる機会を奪う条例・法律は早急に見直されることを望みます。
2:中野先生の描くヒロインの絵柄は美しいので、「フラワー」のようなメイクラブ・テキストのイラストを担当されても高く評価される筈です。
ちさ×ポン 1 (集英社文庫―コミック版) (集英社文庫 な 48-1)
高校生のちさとポン。
友達の紹介で出会った二人は、やがてラブラブのカップルに。
が、最後の一線をなかなか越えられないちさ。
クリスマスの夜ついに初体験を決意したちさだが・・・
絵もきれいでちょっとエッチなラブストーリー。
よかったら一度読んでみてください。