ドリアン・グレイ [DVD]
日本版をずっと待っていました。発売されると聞いたときは飛び上がり、携帯を放り投げて、足をばたばたしたものです。夜中に知ったのに、家中を駆け回って、叫びまくりたかったのは主演のベン・バーンズさんファンには理解してもらえるはず。
原作ファンの私には、主要三人のビジュアルがぴったりな本作(輸入盤のレビューにも書かせていただきましたが)。ストーリーは、もう少し原作寄りだといいなと思うところもありましたが、2009年版の「Dorian Gray」として最高です。
ただ、待ちに待ちすぎた上陸のためか、日本版デザインには少々不満が。文句をたらたらと申し訳ないのですが…。まず、タイトルの文字が、青色と炎の黄色があるのに、白抜きの赤色。合わないと思うのは私だけでしょうか。原題との色合いもいまいちで、全体的にうるさく、いっそいらないと思います。あと、どうしてもダイヤマークのようなものが気になってしまいます。
何より気になるのが「あなたは暗闇から逃れられない」というところ。原題の「Forever Young, Forever Cursed」のままで良かったのではないでしょうか。この「あなた」は誰なのでしょう。原作は「あなた(読者)」に語りかけた話ではないというのが私の見解なので、これには驚きました。せめて、もっと映画と原作寄りにしていただきたいです。待ち焦がれ、期待していただけに、がっかりする度合いが大きかったです。今のところ、字幕がついていることだけに期待しています。
何故日本に上陸するとこんなことになってしまうのでしょうか。私は日本版制作や販売に詳しくないので、全く理解出来ません。正直、原題が変わりきった作品は観る気が失せます。DVDの売り方にも疑問があります。名作のBlu-ray版やトリロジーBOXにどれだけ期待していたことか…。他の作品もしかり、待っている方がいるのですから、それに応えていただきたいです。
上記はあくまで作品のレビューではなく、日本の売り方に疑問を持っている一人の人間の気持ちです。作品は素晴らしいので、気になっている方には是非おすすめいたします。長々と申し訳ありませんでした。
The Immortal Life of Henrietta Lacks
ヒーラ細胞というのは、日本だと医学科の一年(専門課程の前フリ)に教わる分子遺伝学関係とかの話のなかとか、ポリオ(小児まひ)のワクチンの話とかで,名前が出てくる程度ではないかなと思います。
いまの高校の生物ではどうなんでしょうか。わたしは高校では習わなかった。
ヒーラ細胞が、その後のガン細胞研究・医学研究に貢献した度合はすごくて、スペースシャトル内でヒーラ細胞を使った細胞分裂の実験も知られていますね。本書の題名通り、ある女性の体内から取り出した細胞がいまも世界中でそして宇宙ですらも生きているわけです。
ひじょうに安定した基盤なので、いろんなウイルスに感染させたりできます。つまり、商業的な価値が高いわけです。日本では、たいていのラボが持っているし、この取扱に慣れたスタッフが多いと思います。
なぜヒーラ細胞を含むガン細胞が、非常に早く増殖成長するかですが、いまの考えでは、消失より分裂に大きく貢献する遺伝子(不均衡)があるからだということになっています。本書ではこの辺の解説が不十分であると感じます。けっきょく我々臨床医は、いろんな治療法の組み合わせを考え、改良し、研究していますが、それは消失>分裂というメカニズムを作り出すことだととも総括できますし、日本の京大の山中先生のグループなどが独創的なアイデアで作り出している幹細胞も、この延長上にあるブレイクスルーだともいえます。その出発点に細胞のガン化→ヒーラ細胞の研究があるといえないことはないでしょうね。
本書には、奇想天外でいいから、なにか飛躍のあるアイデアを書いてほしかった。
それに対し、世間的なおカネに関係するような、ワイドショー的な側面がこの本にはかなり書き込まれています。
この部分が一番読み応えのあるストーリなのかも。
ヘンリエッタラックスという5人の子持ちの黒人女性が、子宮頚部の悪性腫瘍に侵されて、1951年にジョンズホプキンス病院に入院。
その腫瘍の細胞片を使って、同病院のジョージゲイおよびマーガレットゲイが、世界で初めて試験管の中で人間の細胞を増殖することに成功。
ヘンリエッタラックスは、放射線(ラジウム線)治療を開始したが、死亡。
遺族は取り残される。
死亡したその日(1951年10月4日)に、ジョージゲイがテレビ出演。HeLa細胞と名ずけた腫瘍細胞を試験管に入れたものを見せて、ガン治療が近いと全米向けに放送。
これで関係者含め大儲けのビジネスが始まったわけです。ゲノム分析と同じですね。アメリカには分析の特許だけで大儲けした人がいますし、京大の山中グループの特許成立をさまざまに妨害した外国のグループもいますが、全部カネ目当て。患者の治療なんかまったく考えていません。ヒーラ細胞についても同じというのが原著者の真意なのかも。
無知な遺族は、金銭的な側面を含め、あらゆる次元において、取り残されたことが書いてあります。
やがては、何となく納得(させられた)。いまだと、大規模な特許係争が起こる。
このあたりに、娘さんの証言などを交えてドキュメンタリー風に書くタッチは読みごたえあります。
ジョンズホプキンス大学医学部は、世界のトップ10に入るでしょう。メリーランドという小さな州のボルティモアという古い町(ロブスター料理でも有名)にあります。大学院大学です。キャルテックと同じで、高度専門研究機関だといえます。
ノーベル賞受賞者が何人も現役教授として働いています。日本人のブラブラ研究者もかなり多く、わたしも野次馬で見学に行ったことがあります。インプレとしては、極めて個性的。個人的な感慨を持つ余裕はない、チョオ高度の研究組織で、「バカは去れ」みたいな雰囲気があります。
そういうことを思い出しながら、この小さな本を読むと、ヒーラ細胞を使ったがん細胞の分裂の研究から始まってガン研究一般、その治療法の多様性、そしていまの幹細胞をつかった再生医療研究と、なにか見えない大きな因果関係のようなものを考えることができると思われます。
まあまあおもしろい。ただし専門的なことがイマイチということで、★3ことしました。