Somewhere in London [DVD] [Import]
マリリオンと言うと、未だにフィッシュ在籍時のジェネシス・フォロワー的側面で語られる事がある。
しかしVoが現在のスティーブ・ホガースに交代して約20年。
バンドメンバーの交代は、他にファーストアルバムで参加したドラマー、ミック・ポインターからセカンド以降イアン・モズレーに変わったのみなので、五人のメンバーは不動で現在に至り、今秋に新譜を発売する。
さてそのマリリオンの現時点での最新ライブ映像が本作だ。
一見してわかるのが、ホガースのヴォーカリストとしての力量は勿論、ステージ上でのパフォーマンスも非常に優れている事。
そして見逃せないのが、長年に渡ってリズムを支えているイアンのドラムとベースのピート・トレワヴァスの、ベテランならではの安定感と、それでいてニューカマーの様な野心に溢れたプレイであろう。
ピートは、ドリーム・シアターのマイク・ポートノイ、元スポックス・ベアードのニール・モーズ、フラワー・キングスのロイネ・ストルトとの四人による「ブロジェクト」と呼ぶには余りにもクオリティが高過ぎる"トランスアトランティック"を始め、"KINO"等マリリオン以外での活躍も多く、現在のプログ・ロックシーンにおいて隠れたキーパーソンだ。
イアンはバンド外での活動は目立たないが、加入以降の全アルバムにおいて常に「バンドにおけるドラムの仕事はリズムのみにあらず」と言わんばかりのサウンドを聴かせてくれる。キャラ的にも佇まいにおいてもバンド内で一番落ち着いている様に見えるだけに、本作の様な映像作品ではイアンの存在感も注目点である。
そしてバンドリーダーであるギターのスティーブ・ロザリー。
正直な感想としては、ギターの腕に衰えは感じられないものの、プログ・バンドの謎の法則
「誰かがメタボを通り越して、相撲取りかプロレスラーかって位に横方向に巨大化する」
にロザリーが見事にハマってしまった。個人的にはアル中で来日時に歌詞を忘れて声も酷かった時のジョン・ウェットンや、90年代に再結成していた頃のEL&Pのグレッグ・レイク並みに見える。
ロザリーはバックコーラスをしないのでボーカリスト程にシビアな肉体管理をしていないのかも知れないが、他のメンバーが驚く程普通の体型を保っているだけに目立つの何の。ロックバンドは最低限の見た目も気を遣う必要があると言う事を痛感した。
肝心の全体のパフォーマンスであるが、例えばマリリオンを知らない人にいきなりこの映像を見せたら、きっと彼らが80年代初期から活躍するベテランだとはきっと気付くまい。
それ程にエネルギッシュであり、そして確かな技術に裏打ちされたプレイ。
マリリオンが今も進化し続けるロックバンドだと確信出来る作品である。
Script Fot a Jester's Tear (Bonus CD)
なんといっても1stシングル(たしか12インチ)で、1stアルバムに無かった"Three Boats Down From the Candy"がボーナスディスクに入っていて10数年ぶりに聞けたことがよかった。当時はジェネシス(というかピーターガブリエル)くりそつで、びっくりしたものでした。
Clutching at Straws (Spec)
ジェネシスの美味しい部分を継承しつつ自分達のサウンドを構築。機材その他がかなり発達してた1987年度の作品。鍵盤はポルタメントきかせまくりのうりうりするものでもはやありがちなパターンになってしまった。『アルコール依存症』がテーマになっているが、なんだか演奏は歌詞を聞かせるというよりはテクニカルな演奏に重点が置かれている模様。なんだかボーカリストがかわいそう。めりはりのある演奏とメンバーのミュージシャンシップの高さがやはり目立つ。バンド内での意見の対立がやはりサウンドのまとまりにも出ているようだ。やや一貫性に欠ける。 10点中6点
Anoraknophobia
現在のマリリオンは、もはや過去のポンプロック幻像から解き放たれ、極めて自由な感覚で良質のポップ・ロックを発表し続けている。
本作も目下の最新作だが、随分聞きやすいサウンドと耳障りの良いメロディが印象的。
しかし、単なる安物音楽と違い、そこには幾多の困難を乗り越えてきたベテランの味わいが付加され、聞き込むほどにその良さが分かる。
Fugazi (Bonus CD) (Spec)
あまりにデビュー作の出来が凄すぎて、彼ら自身もそれを乗り越えるのには苦労したはず。そんな彼らの試行錯誤の時期を象徴する過渡期の1枚。
当時はライヴを精力的に行っていたはずで、それを見越したダイナミックなノリの曲としてtrk1などが作られ、また彼らの精神世界に根ざしたダークな世界観を投影する曲としてtrk4などが作られたのは容易に想像がつく。
しかし問題なのは、サウンドのアレンジ面である。やや紋切り型に陥っていて、ディレイを効かせたギターアルペジオとか、ニューウェイヴ風のベースラインやキーボードアレンジが予定調和をもたらしている部分があり、それが聴く側に分かってしまうのだ。
しかし、彼らはこの壁を見事に乗り越え、次作「Misplaced Childhood」で音楽的に頂点を迎えることになるわけで、そのための本作での試行錯誤は決して無駄ではなかったわけだ。ファンとしては、ボーナスディスクの当時のレア音源も含めて当時の彼らの思いを共有することができるだろう。