プライムセレクション 柏原芳恵
デビュー曲+TOP10ヒットだけを集めて\2000とお買い得の『ゴールデン☆ベスト』、ご本人のお気に入りを集め、ファン待望のTV映像のDVDも収録したコア向けの『CD+DVD THE BEST』の2作は、非常によく出来ていて、芳恵さんの表現力の高さも味わえる作品だと思います。
ですが、これはいったいどういったこだわりなんだろう・・。
「第二章・くちづけ」よりも「乙女心何色?」にこだわった理由、名曲と言われる「夏模様」、松本隆-筒美京平コンビで歌謡ファンも多い「ト・レ・モ・ロ」を外してまで、アルバム曲の中島みゆきカバー「アザミ嬢のララバイ」を入れた理由が分からない・・。音が特別、良くなった訳でもないし。これだから、レコード会社はいい加減・・と言われてしまいそうな内容なのが残念。表現力アーティストのカラーがしっかりしているだけに。
論理パラドクシカ 思考のワナに挑む93問
いい時代にはなった。
倫理学説。しかも大陸系の晦渋なものじゃない、 英米系のクリアな議論をパズルの形で楽しめる本が出揃った。
マルクス主義の左派には英米系の隠しテーマの功利主義は不倶戴天の敵だし、
それに対抗する観念論とも相性が悪く日本ではタブー視されていたが、その呪縛もなくなった。
また、哲学はパズルなのかとの反発も無意識にあったが重厚長大が有り難がられる時代じゃなくなった。
ここでいうパズルには論理学的なものや認識論、存在論的な物も含まれ、そういうテーマが倫理と切り離せないのは読めばわかるだろう。
代表的な物として、
・倫理問題101問、哲学問題101問 コーエン
・100の思考実験 バジーニ
・論理パラドクスシリーズ 三浦俊彦
などなど。
他にも加藤尚武の現代倫理学入門や今をときめくサンデルの著作なども、例題は豊富だが、パズルに特化したわけではないのでここでは外そう。
100の思考実験は著者は哲学者じゃなく哲学好きのジャーナリストであり、
きめ細かく取材して問題を網羅しているという点では良く出来ている。専門じゃないものが索引代わりに使うには最適だ。
しかし、問題文に続く問題を考えるための導入部分では、例えば水槽の中の脳をデカルト的懐疑と混同していたりする。
哲学的に論じる上で先に進もうとするにはぬるい誤解する危険がある。
確かにその問題が出された文脈離れて議論できることも重要ではあるが、
そのもっていきかたが通俗的で物足りないものになっている。
本当に考えたいなら索引使いに徹してどんどん原典に当たらないと役には立たない。
人間の行動は進化論の適応図式だけじゃ説明できない思考実験などは素人らしくていい味出してて好きだが。
三浦氏の本の方は逆に切れすぎ。本職の哲学者だけあり、良く考えてそこまで答えられるかと、
曖昧を排しあたるを幸い投げ倒しているが、結果、十問に一問はトンデモ解答が紛れ込んでいるので注意が必要だ。
著者の立場は物理主義でも更に特殊な進化論派、確率絶対主義だが、それは特殊な立場で通説でも何でもないし、そこから導かれる議論も通説足り得ない。
例えば一例上げるならエディプス・コンプレックスを論じたところでは、
進化論的に近親相姦続ければ遺伝子的に弱点が累積し、排除されやすいから淘汰され、忌避されるし、
遺伝子戦略として残す意味はないからエディプス・コンプレックスは遺伝されえないから過ちだと言うが、
そういう遺伝子的忌避や社会的関係がめちゃくちゃになるから近親嫌悪が埋め込まれながら、
同時に生物として生殖活動としての性的対象としての欲望もあるから、
生物の原理として矛盾した葛藤があるから、エディプス・コンプレックスが意味があるのだろう。
論点がずれているのだ。
生物学的に片がつくのではなく、生物学的な中で様々な矛盾した要素があるから、
どうコントロールするかとして、浮き上がった問題だろう。
生物学だけでは解けないから自然と文化の謎として出てくるのに、
生物学のレベルで答えを出すのは問題のレベルを混同している。
彼の進化論主義、生物学主義や確率重視主義もこのように論点の混同からたやすく間違える。
彼が哲学に紛れ込んだ蒙昧主義神秘主義を批判するのは賛成だし、
仮想敵のネーゲルや永井均などのクオリアだ私だ神秘主義めかした議論が多いのは事実でそれらを批判したいのはよくわかるし、
それらはトンデモであるのは事実だがそれを批判する議論自体がトンデモになってしまっている。
オカルト批判した大槻教授みたいにそれ自体トンデモと化している議論が正当な哲学議論と同居している。
批判が批判にならず弁護しているのと変わらない弱点さらけ出すものが結構ある。
議論の前提条件がニ三ぶっとんでいるものを承認しないと導けない議論が多い。
無論無理やり白黒つけたり割り切ったところが魅力なのだが、鵜呑みにしないで批判的に読むことが大切だ。
良いところは批判的に読んでも議論が開かれてるところだ。
コーエンは答えが出せないことをわかった上でその問題を整理して構造化し、
より一歩上を考える参考になるよう配慮していて、哲学的に一番深い。参考になる。
一問一答ではなくディスカッションではグループで何が問題とされているのか掘り下げて考えられるようにしている。
ソクラテスに対抗するアリストテレスとニーチェの賎民道徳を否定する生き方の問題など、フーコーやドゥルーズにつながり興奮した。
哲学をある程度わかっている人間には一番益になる。
しかし、初学者には何を論じているのか、わざと曖昧にしているのかと不評だろう。
各自特徴を捕まえて利用して欲しい。
論理サバイバル―議論力を鍛える108問
前作、『論理パラドクス』の姉妹編。本格的に論理学を学ぶための本ではないけれど、有名な論理学の問題やパラドクスを集めた本著をじっくり読めば、論理的な能力がつくこと間違いない。値段も安めだし、ネタ本としても重宝する。参考にした文献も逐一載っているので、発展的な学習をする場合も便利。
ちっこいところではツッコミたくなるところもあります(Q001とか微妙)。三浦氏は「正解らしきものが一つも見当たらない」のがパラドクスと説明しますが、単純に答えがなくて解けない問題を私たちはパラドクスとは言いません。ちょっと筆が滑ったかな?とか思わないでもないです。ま、そういう箇所があるにゃあります。
しかし、ただの論理パズル本にはない特徴として(α)哲学の問題をパズル・パラドクスとして多く紹介しており、哲学へのイントロ的な要素がある(β)解答のための様々な思考ツール(その問題から得るべき教訓)についても解説している、という点が挙げられると思います。この点に著者のオリジナリティがある。遊び心もいっぱい入ってるし、魅力的な本ですね。
論理パラドクス―論証力を磨く99問
学生時代(高校とか大学)とかでやっていた
論理問題を思い出します。
といってもそんなに身構える必要はなく
「床屋のパラドクス」や
「くじのパラドクス」など
日常にあるテーマをパラドクスにしているので
いいです。
99問あるので、寝る前に読むとよく眠れます(笑)
教授とミミズのエコ生活
ソーラーパネルを設置したついでにエコっぽいことを他にもしてみたくなってミミズコンポストを始めた昆虫好き著者のエッセイ。
ミミズの交尾に感動し、掴み上げたミミズのひんやり感に感動し、ふかふかの堆肥に感動する著者の生き生きとした描写に私も感動。ミミズ愛がこうじてサプリや栄養ドリンクを投入したり、買ってきたままの食材を投入したりして、本末転倒な反エコ生活に転落する気持ちもよくわかる。後半は前半のような感動描写が減り、大事件も常態化して著者も読者も「またですか、またやっちまいましたか」感ありありになるのだが、決してつまらなくなるわけではない。
次第にコンポスト生態系からカオスな自然の摂理のようなものを感じ取っていくわけだが、生物学への造詣が深そうな描写もあったりして楽しい(種を存続するため、という解説書の記述に突っ込んでみたり)。昆虫、軟体動物、その他庭のかたすみの小動物的なものが苦手な人は注意されたし。