陰陽師 天鼓ノ巻 (文春文庫)
春は桜あるいは藤の花が、秋には菊の花が咲き、匂う安倍晴明(あべのせいめい)の屋敷の庭。簀子(すのこ)の上に座した晴明と源 博雅(みなもとのひろまさ)が、酒を飲みながら言葉を交わすうちに、「ゆこう」「ゆこう」そういうことになって、平安の世の都の怪異に出会う話を収めた連作短篇集。『陰陽師 夜光杯ノ巻』以来となる、二年半ぶりのシリーズ最新刊。相変わらずのゆったりと雅やかで、ほろほろと親しみながら頁をめくってゆくことのできる心地よい空気感。もったいないけれど、あっという間に八つの収録作品を読んでしまいました。
今回は、盲目の琵琶法師、蝉丸(せみまる)が登場する作品が多かったですね。彼が弾く琵琶の音(ね)が、月明かりと花の香のあわいに嫋嫋(じょうじょう)と響く中、博雅の吹く葉二(はふたつ)の笛が、ほろりころりと和する調べの美しさ、合奏の酔い心地。何とも言えず、良いですねぇ。このふたりの妙音にもうひとりの楽器が絡んでトリオとなり、満月が冴え返る秋の天に三つの楽の音が溶け合い、響き合う作品に魅せられました。「霹靂神(はたたがみ)」の一篇。十頁ほどの掌編ですが、これ、よかったなあ。
初出掲載は、以下のとおり。
「瓶博士」「器(うつわ)」「紛い菩薩(まがいぼさつ)」「炎情観音」「霹靂神」「逆髪の女」「ものまね博雅」が、『オール讀物』の2008年2月号〜2009年6月号にかけての掲載。最後の「鏡童子(かがみどうじ)」が、『京都宵―異形コレクション (光文社文庫)』所収の作品。
これからも、ずっと続いていってほしいシリーズ。次の巻をまた、楽しみに待つことにしましょう。
陰陽師 2 [DVD]
映画にもなった野村萬斎さんとは違った安倍晴明を稲垣吾郎が演じています。野村萬斎さんのほうは派手なCGとアクションを駆使していて、晴明も個性派な感じです。こちらの晴明は静かで、もののけの悲しさを理解するような優しいところがあります。
もともとの夢枕さんや岡野玲子の陰陽師のファンなら、こちらの陰陽師のほうが遥かにお勧めです。
Cannaのエンディングの曲もドラマにあっていて良かったです。
神々の山嶺(下) (集英社文庫)
あとがきに著者が「どうだ。まいったか」と書いている。私は素直に「まいりました」と言う。これ以上の山岳小説がこの先書かれる事があるだろうか?著者は言っている。「神々の山嶺」以上の山岳小説は出ない・・。納得。緻密で骨太、とても読み応えのある小説だった。発行から10年目にさんざん寄り道したり、遠回りしてめぐり合った。めぐり合えて本当に良かった。
music for 陰陽師
ブライアン・イーノには興味があるけれど陰陽師も雅楽もよく知らない・・・ENOdiskは欲しいけど雅楽diskはいらないかも?と迷っている方、私もそうでしたが、今では雅楽diskの方がよく聴いてます。この雅楽diskは買って損しません。
ラヴクラフト全集〈5〉 (創元推理文庫)
良い作品が収録されているのですが、翻訳が悪いので、とても残念です。
大瀧氏の訳は、句読点を付ける箇所が悪かったり、文章の区切り方が悪かったりして、
文章が長々ったらしくなり、非常に読みにくいのです。
そのような訳は、文章の意味が分かりにくくなります。
もっと分かり易い簡潔な翻訳をお願いしたいものです。
「ダンウィッチ(ダニッチ)の怪」は、大瀧訳以外の訳を二度読んだことがありますが、
そのどちらも分かり易い簡潔な文体で翻訳してありました。
「ダンウィッチの怪」に夜鷹が出てきますが、
上記の二訳者は、「夜鷹」と訳しているのに、
大瀧氏だけは「ウィップアーウィル」と訳していました。
「ウィップアーウィル」と言われても、一般人にはイメージが湧かないと思います。