夜のゲーム [DVD]
とかく“○○映画祭出品作品”というのは不可解な作品が多いように思います。
本作も,日本の第20回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で特別賞を受賞したという作品なのですが,結局何が言いたかったのかよく分からないまま悶々と見てしまいました。
原作は,小説家オ・ジョンヒssiの同名小説ですから文学的ではあるのでしょうが,映像的には冒頭の双眼鏡シーンに始まり,ダンプの運転手に殴られるシーン,煎じ薬として使われる蛙たち,豊満な乳房を映し出した着替えのシーンなど,音の世界を失った主人公の説明的な導入部としては意味不明さを感じます。
主人公ハ・ヒギョンssiの役柄は,言葉と聴力を失った35歳の女性ということでセリフこそありませんが,常に“制御された演技”を要求されるわけで,目つきや口元や仕草など,官能的な熱演が見どころとなっています。
「夜のゲーム」の意味するところが,夜毎に父親とする花札なのか,女としての性的行為なのか,おそらく後者を意味し,逃亡犯に襲われることによって女としての快楽に目覚めるといった辺りを描いているのだと思いますが難解です。
ちなみに,本作の原作本(波田野節子訳)が今月刊行されるみたいなので,それを読んでからもう一度見て見たいと思います。波田野節子さんといえば,NHKラジオハングル講座の応用編を担当された方で,以前にも呉貞姫ssiの小説集を翻訳されています。
興味のある方は,段々社から「金色の鯉の夢―オ・ジョンヒ小説集」として発刊されていますので読んでみてください。作者が38度線を越えるまでのお話や,越えてからのお話など,とても興味深い短編作品です。
テツワリミックスズナリ2009 [DVD]
戌井さんの頭の中の世界へようこそという感じです。地獄あり天国ありというか、平成の見世物小屋とも言われているし、コントのようでもあり、落語のようでもあり、寸劇や歌舞伎、狂言、浪曲などすごい世界です。毎年いろんなところで公演をやっているので見に行く前に参考に見てみるといいとおもいます。なにしろ生で見たほうがすごいですが、映像もすごいです。毎回記録に残してほしいです!
芥川賞を取らなかった名作たち (朝日新書)
本書は、芥川賞候補作品のうち受賞に至らなかった作品の中から筆者が選んだ名作12作品を、仙台文学館の連続講座で受講者とともに読み直したものである。講師を務めた筆者は、作品と作者についての解説や名作の所以、読みどころに加えて、当時の選評や同じ選考期の他の候補作品にも触れる。文章は講演調で分かり易く、講座受講者やゲストの文芸誌編集者や作家の発言もあって、会場にいるような気分になる。
評者はこれまで佐伯さんの小説をほとんど読んでいないが、実作者ならではの解説は非常に面白かった。文学観が窺えるものに「小説の批評はいくらでも悪く言える。悪いところばかり見ても本当に読んだことにはならない。いいところを見つけ出したいと思って読む」とか、「(作家が戦争体験や闘病体験を描くのは)書かないことには苦しみから解放されないし、生きられない」とある。また小説の作法としては、主人公の人称によって視点が変わること、書き出しの工夫、通俗性を避けた比喩表現、等に作家の苦労を語る。
筆者は良い作品は良いとの考えであり、芥川賞の当落に拘ることは本書の意図に反するだろうが、凡人にはやはり気になる。選考の最終局面では、選者の作家・作品に対する好嫌や押しの強弱が反映し、2作品で競った場合は同時受賞もあるが3作品で競った場合は該当作なしが多いとは、腑に落ちる話だ。個別には、北條民雄の場合、師匠格の川端康成が北條の病気と世間への配慮から強く推さなかったことに触れ、また島田雅彦と干刈あがたの秀作が落選したケースでは、選者達の読む能力に対しやんわりと疑問を呈している。
巻末に芥川賞候補作と著者が名作として読んできた作品のリストを掲げている。いずれも興味深いが、洲之内徹の「棗の木の下」と小沼丹の「村のエトランジェ」は、すぐにも読みたいと思った。
葬送 平野啓一郎が選ぶ”ショパンの真骨頂”
絶対に買いですね。
聞いていて、ふと、平野啓一郎さんが小説「葬送」を書かれていたころの風貌を思い出しました。
「葬送」は年々、重みを増してるような気がします。
芸術も消費されるためだけに作るられることも多い世の中で、作家がある決意を持って、自分の作品と真剣に向かい合い
そしてそれが、色あせないのは奇跡的なような気がします。
ただ、純粋にこの音楽に向かい合ってみたいと思わせる輝きが、このCDにはつまっています。
共喰い
しつこい描写に読み始めはうんざりしたけれど、読むうちに著者の優しさを感じた。
女の人に優しい人なんだろうか。
女の人に暴力をふるう話なのに、女の人を大切に描いている。
仁子さんの強さと愛が好き。
『第三紀層の魚』は、それぞれの静かな心の動きが『共食い』の強烈さを中和させてくれた。